デザイン思考から生まれる創造性:異分野から経営のアタリマエを見直す 平井康之氏③

「デザイン」という言葉は経営の世界でも使われてもいる。その本質はどのような志向にもとづくのか、「インクルーシブ・デザイン」といった考えをもとに企業や市民社会と幅広く関わっている平井先生にお話を伺った。

第二回 (3)デザイン思考から生まれる創造性

平井康之
九州大学 芸術工学研究院 准教授
専門はインテリアデザイン、オフィスデザイン、インクルーシブ・デザイン等。ダイソンを輩出した英国王立大学大学院修士課程修了。日本の民間会社でのデザイナー、アメリカのデザインコンサルティングIDEO勤務の後、現職。

ホットキーワード

Q:組織のあり方や仕事観にも影響があるように思いますが、いかがでしょうか。

日本の組織には潜在的可能性があると思っていますが、今のままでは駄目で、仕事観、組織間は変えるべきだと思います。私は元々ワークプレイスのデザインをやっていたので、インクルーシブ・ワークプレイスも提唱しています。単に執務環境のデザインだけでなくて、使う言葉や仕組みを企業に提案することもあります。

例えばホットキーワードという言葉を使って提案しています。ワークショップでは、たとえいいアイデアがたくさん出ても、それを束ねるキーワードにありきたりの言葉を使うとせっかくのアイデアが死んでしまうことがあります。それをホットキーワード、つまり、これまで聞いたことがなくて、インスピレーションがわく言葉に置き換えて表現します。会話からデザインはスタートしますので、創造的な言葉の使い方はイノベーションのポイントになるんですね。そのようにどこにでもクリエイティブな解決方法があるというのがインクルーシブ・ワークプレイスです。

 

Q:マネジメントにおいてデザインの重要性はどこにあるでしょうか。

やはりコミュニケーションとしてのデザインでしょうね。デザインというのは芸術的な仕事でハードルが高いと思われがちですが、本当はそうではない点がデザイン思考です。異業種、異分野の人が共同で一緒に考えていくところにポイントがあり、そこでどうやってコミュニケーションをとっていくか。例えば、他分野にはわかりづらいチャートや図表をどうわかりやすくして共有していくか、についてデザインの方法論を用いて解決していくことなんです。また本質的な課題は何か、と常に考えることは重要だと思います。ユーザーやクライアントから頼まれた仕事のテーマは、先方が見えている範囲でしかない。本当は違う場合も多いんです。クライアントが本当に解決したい課題を見えるようにしていくことが大事になってきます。

 

Q:デザインから社会を見たときのお考えや想いをお聞かせいただけますか。

国立社会保障・人口問題研究所の阿部彩氏が「弱者の居場所がない社会」という著書で、「居場所」「つながり」「役割」の重要性をあげています。社会的排除をなくすソーシャルインクルージョン(社会的包摂)やソーシャルデザインは、それらを創造していくデザインで、インクルーシブ・デザインはその流れにあります。でも学生は経験不足から概念的に社会を考えてしまう。そこで私は学生に必ず価値基準として「あなたのデザインは自分事のデザインになっているかどうか」を問い、次に「目の前のものではなく、その背後にある社会的なしくみをデザインしているか」を問うことにしています。その二つの極がつながってはじめて良いデザインになります。デザインの幅はかなり広がっていますが、同時に、もったいない面も感じます。
例えば地球温暖化のような環境問題とユニバーサルデザインはまったく違うものとして取り上げられていますが、熱中症対策のシェルターを高齢者にやさしいデザインになっているかを考えることで、より暮らしやすい、楽しく暮らせる世の中や社会環境を一緒に考えていくことができると思うんです。インスピレーションを持って、様々なアプローチをかけあわせていくことが大事だと思っています。

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