「自在結合」という考え方:異分野から経営のアタリマエを見直す 今田高俊①

社会システム論の領域から、マネジメントにも応用できる自己組織性・自在結合という考え方について語ってもらった。

第三回 (1)「自在結合」という考え方

今田高俊  Takatoshi Imada
東京工業大学大学院社会理工学研究科 教授
専門は社会システム論、社会階層、社会理論。
サントリー学芸賞を受賞した『自己組織性』他、多くの書や論文を執筆している。
2008年紫綬褒章受章。

 自己組織性について

Q:先生の研究の主テーマについて教えてください。

社会システム論の領域が主テーマです。その中でも、自力で自分を変える自己組織性のメカニズムを研究しながら組織論、経営論などにも応用することをやっています。

自己組織性というのは二種類あるんですね。一つ目は「サイバネティックス」という、管理、コントロールにより目標を達成できるようにする自己組織性で、トップダウンで組織の行動や構造を変えるという発想に立っています。これは戦後の社会の繁栄を導いてきた考え方でもあります。しかし、高度成長に陰りが出る頃に疑問を持たれるようになりました。理論的には悪くないが実践的、政策的にはどうなのだろうかと。上から目線で社員を管理することの限界が感じられるようになり、新たに「シナジェティックス」という考え方が導入されるようになりました。これは要素が互いに協同作用しあって、相互のインタラクションから新たな秩序や特性を立ち上げる、ボトムアップの発想に立ちます。

私も最初はサイバネティックスを研究していましたが、どうも時代の雰囲気にあわないと感じるようになり、途中からシナジェティックスのパラダイムに転換しました。これは元々ハーマン・ハーケンという、レーザー光線を研究してノーベル賞をもらったドイツの物理学者が唱えた考え方です。レーザー光線は、普通の波長が重なりあうことでシナジーし、第3の別の波長に変わるんですね。それを唱えた人がこの人です。サイバネティックスは「操縦」という感じですが、シナジェティックスは要素の協同作用が重要で管理センターがないという違いがあります。

経済学者のハイエクもこの考え方を応用しました。計画・目標をたてて何かをやるのではなく、その場で何かをやってみる、そういうパフォーマティブな行為から、自発的な秩序が立ち上がってくる点が大事だという主張です。外から過度の介入をしてコントロールすることは活力をなくしてしまうのでやめるべきだ、というのが彼の考え方。それとシナジェティックスはぴったり合うんですね。

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