「自在結合」という考え方:異分野から経営のアタリマエを見直す 今田高俊③

社会システム論の領域から、マネジメントにも応用できる自己組織性・自在結合という考え方について語ってもらった。

第三回 (3)「自在結合」という考え方

今田高俊  Takatoshi Imada
東京工業大学大学院社会理工学研究科 教授
専門は社会システム論、社会階層、社会理論。
サントリー学芸賞を受賞した『自己組織性』他、多くの書や論文を執筆している。
2008年紫綬褒章受章。

「自在結合」という考え方 (前回よりつづき)

Q:マネジメントも同じかもしれないですね。

ビジョンを出して、他にいくつかの原則を与え、ただし付加価値が出るようなこと、おもしろいこと、というような指示をすれば、結果いい状態になるはず。これは自在結合の考え方です。自由発想で、いろんな試みができやすいように組織をつくることが大事になってきます。

組織をつくるといっても簡単なことではありませんが、私は次のように考えています。普通、組織をつくるときに、役割と地位を用意して企業の成果があがるようなピラミッド組織をつくっていきます。それは今までの主たる発想ですが、通常、その形をつくって、そこに人を当てはめますよね。組織を先につくって人をはめるとせいぜい6,7割しか力を発揮できない。そうではなく、既存の人材を前提にして、その人たちが最もいきいきと働きやすいように組織をつくればよいのです。適材適所を見抜く力がリーダーに必要になるが、それを考え、がんばって編集すればよいのです。だから人材が変わればその都度組織は変わるんです。こうした組織のいい例が、神戸製鋼の平尾主将時代のラグビーチーム。たとえばリーダーが占めるべきポスト(司令塔であるスタンドオフ)を新人にやらせて、リーダーはより適するポジション(インサイドセンター)をとるなど、役割と位置を固定せずに人材にあわせてベストな組み合わせで戦っていったんですね。自在結合をするリゾーム型組織の一例です。

 

Q:常に動的なんですね。そのリーダーはエディターという位置付けが確かにそぐうように思います。

編集能力の良し悪しでパフォーマンス成果が全然違う。わかりやすい例はオーケストラです。それぞれの楽器スキルが高くても、オーケストラとしての音というのは指揮者の編集によって全然違ってきます。カラヤンのような指揮者の、突出した編集の仕方というのも表れるでしょう。

編集能力はトレーニングに依存するところが大きいと思います。絶えず新しい編集を、時代の変化にあわせてし続けないといけない。ただ、過度に編集して組織をゆがめてしまうこともあり得て、会社に悪影響を及ぼす可能性もあり得るでしょう。

 

Q:「次世代に向けて」ということではどのようにお考えですか?

そもそも次世代に向けてメッセージを発するという考えがおかしいのです。世代は循環しないとだめで、一方向に渡すようなものではないのです。世代論で典型的に言えるのは、ライフサイクルを進んで、青年期のアイデンティティ・クライシスを乗り越えて壮年期に入るとジェネラティヴィティ・クライシスに直面します。この危機を乗り越えることで獲得する力はケアをする、世話をするということです。すなわち自分がつくりあげたものが次の世代にうまく伝達されるようケアをすることへ意識が向きます。逆に若い世代は先達の出してきた価値に注目し、受容しつつ変えようとする。そこが一体化し、歯車がかみ合うようにうまく循環できるかが世代サイクルのかなめです。

組織でも、若い人が、目標とする上司や先輩を見て、誠意をつくすがんばりができるか。そういう機会が見いだせるかどうか、ということと、上司側としては、自分の作ってきたものにこだわらず、若い人がそれを使って新しいものを生み出すように世話をしていく循環が大事になります。だから、次世代のために何をすればよいかという発想はやめたほうがよい。必死になって世代交流をしている状態を、もっと活発にしていくことが必要だと思います。

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