予期しない活動や価値が生まれるプラットフォームのちから ―境界の設計、資源の持ち寄りが機能する地域づくり:異分野から経営のアタリマエを見直す 飯盛 義徳①

第八回 (1)予期しない活動や価値が生まれるプラットフォームのちから―境界の設計、資源の持ち寄りが機能する地域づくり

飯盛義徳(いさがい・よしのり)
慶應義塾大学総合政策学部教授 兼 政策・メディア研究科委員。佐賀県生まれ。専門はプラットフォームデザイン、地域イノベーション、ファミリービジネスなど。大学で新事業創造や地域づくりなどに関する研究・教育を行うとともに、各地域での実践活動にも携わる。佐賀にあるNPO法人鳳雛塾の理事長他、総務省ふるさとづくり懇談会委員などを務める。主著に『「元気村」はこう創る』(日本経済新聞出版社)、『地域づくりのプラットフォーム』(学芸出版社)ほか。

地域づくりに関わってこられた背景

元々佐賀市で生まれて、高校は越境で長崎へ、そして大学は東京へ行きました。卒業後に企業就職をしましたが、5年勤めたあとで慶應義塾大学のビジネススクールに入り、突行後は佐賀の地元で父がやっていた会社に入社しました。その佐賀にいるときに鳳雛塾の立ち上げ、運営をしてきましたが、その後、慶應の博士課程に再入学し、修了後は大学研究者として、様々な地域プロジェクトにマネジメントの視点からかかわっています。

慶應SFCのキャンパスではプロジェクトベースの実践活動が主です。私のゼミでも学生がリーダーとなり、地域の人と共にアクションベースで実践することが研究活動となっています。

 

地域づくりの目指す方向について

地域づくりといっても環境、教育、介護福祉など多岐の分野にわたりますが、共通して目指す方向としては、主体的な新しいことが次から次へと起こっていくこと、新しい価値が次から次へと生まれている状態ではないかと思っています。何かをやるといろんなことが起こり、そして予期しないことが起こることになるのが大事で、その基盤がプラットフォームだと考えています。

プラットフォームは、広義の考え方では場が含まれ、狭義としてはコミュニケーション制度や基盤というものです。いずれにせよ共通するのは、うまく設計すると創発、すなわち予期もしなかったいいことが起こる可能性があるということです。

 

鳳雛塾について

実は10何年ぶりで佐賀に帰ったら、随分さびれているのにびっくりしました。ただ、行政は熱心に様々な独自施策をやっている。ところが、助成がしっかりしていても、活用するプレイヤーの絶対数が少ない。また、新しいことをやるには競争と共創を進めるコミュニティが必要だと思いますが、それも生まれづらい。だから、制度導入と同時に人材育成が必要だと思いました。

それで、「佐賀県政への提言」論文コンテストがあったときに、仕事から離れたことを考えるいい機会だと思って書いて応募したら一等賞になりまして。それが新聞全面に掲載されたんです。ただ、その実行に際して、地元人脈も少なくなかなか進まないでいたときに、その後長く塾の事務局長をすることになる佐賀銀行の横尾と出会いました。横尾は新聞に出た提言を読んで、こういうことを絶対やらないといけないと銀行内で提言して動こうとしていたんです。その頃にたまたま出会って、一緒にやることになりました。

鳳凰のひなを育てるということから命名し、アントレプレナー育成の場として1999年にスタートし、2005年からNPOとなりました。今までで約500名が卒塾しています。

はじめはビジネススクールでやっているケースメソッドを取り入れて学び議論する場をしたのですが、教材が大手企業ばかりでどうもぴんとこないという話も出てきました。そこで、地方企業のようなケースを独自開発し、使うようになりました。

通常ビジネスクールは限られたメンバーが教材を読み込んできて議論をしますが、ここで私は、多様な人、多様な意見が入ってくることが必要だと思いました。地方ではプレイヤーが限られている中で、ビジネス界以外の人にも開放したら、行政の方、大学や高校の先生、議員、マスコミ、そして高校生も入ってきました。そして、その人たちが完全に対等に机を囲む場にすることを徹底しました。OBや知り合いが後ろで聞いていることもあり、佐賀銀行の理解で、行内での実施・交流会も毎回行いました。

実は、鳳雛塾は一時期のかかわりではありますが、塾の一期生で、当時まだ大学生だった人がその後会社を立ち上げて、上場しました。佐賀県で何十年ぶりだと思います。また、地域を代表するような会社が多く塾生を送ってくれたり、NPOや地域づくりをやる人が次から次に生れたりとしています。私は学び合いのコミュニティをつくりたかった。そこから創発や予期もしないことを起こしたかった。その意味では、その方向に進んでいるような気がします。

現在は、社会人ではなく小学生がメイン事業です。2002年から始めており、その後、高校生向け、中学生向けも増えています。具体的には、広告のつくりかた、価格の決め方、販売のやり方、製品の事等、マーケティングのことを全部教え、本物の事業計画をつくってもらいます。そして我々の特徴は、佐賀銀行とやっていますので、現金を実際に借りさせることです。事業計画をつくると銀行に提出し、そこでチェックが入ります。そして最後は商店街の空き店舗で販売実習をやる。銀行からお金を借りるなんて怖いと言いながら、実際に行っています。

また、各地から関心を持つ方が来られて、持ちかえって各地展開をされています。最初は富山での展開がありました。また、今、石川県で、地元企業のケース教材をつくりながら県内のファミリービジネス系の学びのコミュニティがつくられていますが、活発にまわっていると思います。

 

学生と共に関わる各地のプロジェクト

毎年必ず1回夏は合宿でどこかの地域と連携し、フィールドワークをして課題をあぶりだし、地域の人と一緒に解決策を徹夜でつくって、皆さんの前で発表することをずっと繰り返してきています。

たとえば尾鷲市に2011年に学生たちと共にはじめて伺い、こうした活動をしました。地域の人が主体であるのが大事だという点と、議論をするときには様々な立場の人がまじりあい、境界をまったく曖昧にして実施することを重視しています。こうした持ちよりの学び合いの場は、大学が関わる地域づくり活動として大事だと思っています。

ここで出たアイデアのひとつで、漁協のテントを使って毎週末、地元の産品や料理を売りだした活動があります。海のそばにある地区で、毎週末外からシーカヤックをやる人がくるのですが、地元には買うところも泊るところもないので、来て帰るだけという課題がありました。いきなり大きな直売所をつくるのではなく、できることから始めようとやったのですが、かなりにぎわい、毎週売り上げがあがっています。ここまできたら、今後直売所に展開も考えられますね。

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