生物としてのヒト:異分野から経営のアタリマエを見直す 長谷川眞理子氏①

このコラムコーナーでは、様々な識者に伺った世界観、イキイキ企業の紹介、最近の身近な変化に関する座談会記事等を掲載していきます。

第一回 (1)生物としてのヒト

人類学者 長谷川眞理子氏(総合研究大学院大学 教授)

「生物としての人間」にとって現代社会とは

Q:生物としての人間から離れた関係とは、例えばどういった事でしょうか。

例えば、夜でも明るいことですね。普通は明け方から日暮れまでが明るくて、それが夜ずっと明るいというのはおかしいんですね、それがたぶん青少年のホルモン状況を乱している事にも影響をしていると思います。
それと、この進化の何百万年とってもこんなにタンパク質や砂糖や脂肪やらがあふれていた時は無く栄養過多な時代なんです、私達の体は今までそんな状態になれていませんでしたから、それに適応できず、だから糖尿病や心臓病にもなるんです。それに加えてジャンクな栄養ですね。子供が好きなだけジャンクな栄養にアクセスできるという時代は何百万年もの間、ありませんでした。
労働のスタイルも例に挙げることができると思います。本来人間は決まった時間に決まった仕事を決まった場所でするという環境ではなかったわけですね。人間って狩猟採集民だったでしょ?狩猟採集民ってどういう日常のペースで仕事をするかって言うと朝出て行って夜帰ってくるというリズムはあるけれど、会社に行くみたいに9時までにある場所にみんなが一斉に集まって、そこである割り当てられた狭い範囲の仕事を絶対にやらなければいけなくて、それの成果によって評価されたりする暮らしでは、無かったんですね。生物学的に見ると今まで人間はそういった生活をしたことないわけですよ。

Q:最近、取り組んでいらっしゃる研究についてお聞かせください。

最近は思春期時期から成長過程を追いかけていく研究をしています。

メンタル系の疾患が明らかになってくるのが思春期なんですね。なので、思春期の直前の10歳から始めて思春期にどういう風に過ごすと30歳ぐらいになった時にどのようになるのかということの大規模調査を六千人集めてそれを毎年追っかけていくということを行っています。子供が対象なので、親も調査していて、親の満足度、態度など、それといじめとの関係性なんかも調べています。メンタルヘルス系なので、精神科のお医者さんが沢山入っているんですが、私が入っている理由は、現代環境が生き物としての人間の進化した環境とどれだけずれているかという事と、生物学的に思春期というライフステージがどういう意味があるのかっていうことをおさえるためにです。

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※この記事は「KAIKAスタイルマガジン 第1号」(2013年4月)より転載しています。肩書き・記事内容はインタビュー当時のものになります。

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