受け渡される学びの文化づくり:異分野から経営のアタリマエを見直す 鈴木 謙介②

第六回 (2)受け渡される学びの文化づくり

鈴木謙介
関西学院大学 社会学部 准教授

Q:社会学部での教育という点をもう少しお聞かせください。

社会学部は幅が広く自由度が高く、学びをいかすも殺すも自分次第になっちゃうところがあります。勉強したことを社会に出てから10年後に使えるスキルに変えていこうという点は、他学部ではなかなかできないのかもしれません。知識を教えてもそれをどう使うかは自由だという雰囲気がおそらく他の学問より強い。何をテーマにしてもいいところがあって、学生が結構迷いがちです。それはいいところだと思いますし、その魅力にひかれてぼくもこの世界に入りましたが、それをうまく使うところまで誘導していくことが今の大学教育では欠けているように思います。

たとえば、ある種の社会的兆しをみて、何が解決されるべき課題なのかを抽出します。抽出したうえで解決策の提案があって、実際に実行するわけです。企業で多くの場合、文系の学生に期待されているのは実働部隊として動くことだったと思いますが、どんどん上流を求めるようになってきています。従来の教育も、実働できる社会性なり積極性なりがあればいいということで大学教育をしてきた面がありますが、上流部分が期待されるときに学問のフレームワークをうまく当てはめられる教員は少ないかもしれません。社会学は兆しを見つけてくるのに向いていますし、僕のゼミでは、兆しから課題抽出、解決策提案というプロセス自体を何回も繰り返します。実行のフェーズまでやると数が限られてしまうので提案のところまでを何回もやらせるのですが、解決策の提案に至るプロセスで他の授業でおそわったことを持ち寄って考えられるよう、持っているものをうまく使えるようなプログラムを目指しています。

これをやってもらうための大前提としてメンバーシップのようなものを設計しておかないと、知識や勉強のみを求めるところとのミスマッチが大きくなってしまいます。大学は企業で活躍する人材をつくるだけだとは思っていないのですが、まったくそぐわないのもどうかと思い、一定度合いまではできるんじゃないと思っています。かつ、学生にも最初からそれを言います。言われた方は最初はよくわからないけれど、4年生になると確かにわかるようになり、後輩に伝えてあげなきゃとなって思うようですね。

こんなアナログの紙で、アイデアを出し合うワークショップもいろいろとやっています。繰り返しやっていてわかるのは、マネジメントでも戦略を変えるべきなのか戦術を変えるべきなのかをきちんと見極めさえすれば、戦略的にはまだまだ有効なものがあるということです。

 

Q:課題を課題と感じるのも力がいるのではないでしょうか。

だから抽出なんですね。普通の子たちは直接的な解決を目指すけれど、課題と言ったときに根本のところからの解決という視点で分析をしてくる学生も出てきています。三年生の時に毎年企業へのプレゼンテーションをするため東京につれていくのですが、鈴木研究室からのインターンを望んでいただくことも増えてきています。

 

Q:学びの文化の醸成は大事ですね。

そんなに人間変わりませんからね。戦術レベルで見合わなくなったものを、戦略を変えるかで悩んでいることはよくあると思います。戦略を変えるべき点はいくつもあると思います。ダイバーシティや介護、ワークスタイル等は戦略から変えないとだめでしょう。一方で、人間が仲良くなるプロセスってそんなに今のところ変わっていないので、若者だからといって宇宙人のように根本的に見方を変える必要はないはずなんです。

企業の変化が速くなっている中、悠長なことはいっていられないという人もいますが、とはいえ、3年かけられないことはないだろうと思います。風土という長い時間かけないと変わらないものに関して考える以上は、少し長期的な視野にたって、多少のトライアル&エラーはありつつ、何年かかけて育てていく、小さいところからじっくりつくっていうことができるかどうかだと思います。

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