創造性のある組織関係の基盤にはシンクロナイゼーション(同期現象)があった:異分野から経営のアタリマエを見直す 渡邊 克巳①

第七回 (1)創造性のある組織関係の基盤にはシンクロナイゼーション(同期現象)があった

渡邊 克巳 先生
東京大学 先端科学技術研究センター認知科学分野 客員准教授
早稲田大学理工学術院 基幹理工学部表現工学科 教授
カリフォルニア工科大学にて博士。専門は認知科学(知覚、感覚間統合、発達、注意、眼球運動、社会的認知、意思決定)、神経科学(動機、報酬、大脳基底核、脳磁界、発達障害)

結果論としての創造性

-「創造性」という現象と個人の脳の使い方などに関する研究について、何か動向があればお教え下さい。

(渡邊)例えば、創造的な人の脳の使い方のような研究は沢山あると思いますが、脳をこう使うとスバリ創造的になるということはあまりありません。そもそも「創造性」ということが、どういうことかという議論もまだきちんとなされていないと思います。

 

-「創造性」という現象をどう定義するかということですね。

 

(渡邊)そうです。実際、例えば一つの物事を突き詰めて頑固にやり続けることが創造性に結び付くこともいくらでもありますし、一方、横に広げていって新たなものを探索し、色々に手を出すことが創造性に結び付くことも当然あると思います。

例えば、デザインやアートの領域では、色々なものに手を出していては創造的だとは言い難い世界と考えますが、経営や商品開発の領域では、突き詰めていったものよりも、新たな展開をする方が創造的だという様なところがあると思います。

そう考えると、創造性という現象は結果論に近い気がします。そこで、どういうものを我々は創造的だと見なすのかという研究が必要だろうと考えています。

 

-受け取り側やコンテクストの問題ということですね。

 

(渡邊)そうです。「創造的な人がいて、創造的なものがポッと生まれて、それが周囲にすごくウケる」という考え方は多分非常に良くなくて、「創造的な場がある」とか、「創造的な時代がある」とか、あるいは「創造的なものを受け止める消費者がいる」「創造的なものを受け止める社内メンバーがいる」という見方が可能なのだと思います。

 

-存在論というよりも関係性の中で、創造性が成立するのですね。そこには、受け取り側の揺さぶられ度合など、何か条件があるのでしょうか?

 

(渡邊)そういう面もありますし、受け取り側の寛容性も重要だと思います。また、事前の期待の有無や度合なども重要な要素だと思いますね。

 

対話的な関係をつくることが創造性につながる

今例えば、学生にしても社員にしても、創造性が失われているなどの話題がよくありますが、果たしてそうかという気がします。つまり、送り手側の問題よりも、受け手側に問題がある気がするのです。

創造性は内から出てくるものではなくて、関係の中で生まれてくるものです。ですからその点をきちんと見極める必要があるのではないでしょうか。

もっと端的に何が問題なのかというと、送り手が新しいものを出しても、受け手が「ふーん」とか「無理でしょ」で終わってしまうその態度です。

多分これから企業に必要なのは、受け手側の教育だと感じています。

 

-どのような観点からの教育でしょうか。

 

(渡邊)上から目線ではなく、対話が必要だと考えています。例えば、「お客さま目線」で考えることは重要ですが、それがあくまで「売れるため(目的)にお客さま目線で考える(手段)」という発想である限り、上から目線になってしまう気がします。もう少し対等な関係性ができないかと思うのです。

また、企業の宿命かもしれませんが、社員の会社への忠誠心向上が勝ちにつながるという考えが常識化していると思うのです。これを人間関係に模して言うと、「自分のものだけにしたい」という発想になってくると思うのですが、それだと両方疲弊しますよね。そうでないやり方をもう少し考えてもいいのではないか。

創造性・クリエイティビティ、新しいものの探索などを考えた時に、あくまで最終的な目標として顧客の獲得や売上の倍増、あるいは企業の存続のような話だけを考えていると、何か非常に閉塞感が生まれてきて、うまくいかないのではないかと感じています。

結局、その部分は人間関係と全く同じことなので、人間関係の心理学から学べることがあるのではないかというのが一つです。

 

業績志向が見落とす創造性の種

(渡邊)もう一つ大切なことは、経営にも学校教育にも共通するのですが、ある活動を見る、評価する(PDCA)際に、プロセスの出来不出来や、プロセスから生まれるアウトプット、アウトプットによるアウトカムだけを見ているようでは、恐らくこれから先うまくいかないと感じます。

日本経済も、人口減の中で消費者が減り、市場競争の形が変わります。単純に今まで通りのやり方で右肩上がりの経済を維持することは難しい中で、新しい企業や経営、教育の在り方が必要な気がします。

そこで例えば、その構成員の関係性やうまれた場そのものに価値を置く考え方があると思います。教育はまさにそれが重要な分野で、今までの基本的な考え方は、「ある情報を子どもに教えるということ」でした。しかし、別の教育の考え方も存在します。そこでは、「教える側も変わるような関係」が重要になってきます。

 

-分かります。

 

(渡邊)しかも、その関係も決して上から目線ではなく、変わろうと思って変わるわけでもなく、気が付いたら変わっていたというような関係を大切にするということです。

教育の原点というのは親子関係にある気がします。子どもが生まれると親は変わりますよね。あのイメージを持っている必要があると思うのです。

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