創造性のある組織関係の基盤にはシンクロナイゼーション(同期現象)があった:異分野から経営のアタリマエを見直す 渡邊 克巳②

第七回 (2)創造性のある組織関係の基盤にはシンクロナイゼーション(同期現象)があった

渡邊 克巳 先生
東京大学 先端科学技術研究センター認知科学分野 客員准教授
早稲田大学理工学術院 基幹理工学部表現工学科 教授
カリフォルニア工科大学にて博士。専門は認知科学(知覚、感覚間統合、発達、注意、眼球運動、社会的認知、意思決定)、神経科学(動機、報酬、大脳基底核、脳磁界、発達障害)

良い関係の時にはシンクロナイゼーション(同期現象)が起こっている

(渡邊)例えば、私自身の研究に結び付けると、2人が同時に何か作業をしていて、片方が教える側で片方がそれをなぞる側だとしたときに、その脳の活動などを取って、どちらがどちらに影響を与えているかということを調べると、お互いに双方向的に影響を与えているわけです。

そしてこの2人の間の体の同期度合い、つまり、この2人がどれぐらいシンクロしているかを測ると、そのシンクロしている度合いは、「教えられる側が教える側」の脳にどれだけ強い影響を与えているかに依存するのです。

 

-それはどういうことなのでしょうか?

 

(渡邊)因果関係は分からないのですが、体の同期度合いが、教えられる側が教える側の脳に与えていた影響と相関する。こうした結果を見ると、「あることを教える」という状況・場の成立が、教えられる側から教える側にどれだけ影響が返ってきたかに依存している可能性があるわけです。

 

-本人達はそれに気付いているのですか。

 

(渡邊)いいえ、本人達は影響を受けたことに気付きません。自分の意識にはのぼらないけれど、良い場がうまれている時に、実際に与えられる知識や情報の流れとは別の影響力のようなものが、逆に流れている可能性があると思います。

しかも、目に見えないし本人達も意識しないので、気付かずに終わってしまうのです。

こうした影響力は、まだ教育界でも産業界でもあまり着目されていないかもしれません。

しかし、学校教育でもそうですが、「うまくいったから良かった」ではなく、「失敗したけどよかったよね」とか、「うまくいかず成果も出なかったけれど、もう一回やりたい」という状況や関係性を大切にすることが重要と考えるわけです。

「業績がいい」場合しか駄目という価値観で経営や教育を考えると、重要なものを見失う気がしています。

 

-ソーシャルキャピタルにつながる話ですね。

 

(渡邊)はい。そしてその時に、信頼のような感覚(それはいわゆる「信頼」とも違うニュアンスなのですけど)とか、お互いが何となく一緒にいたりする場とか、嫌いなのだけど何かうまくいくとか、そういう色々な状況が起きているのです。

 

-音楽でいうグルーヴに近いですよね。

 

(渡邊)そう、グルーヴに近いです。お互い嫌い合っているのだけどうまくいくというのもあるわけです。バンドなどもそういうメンバーの関係があることがありますね。そういう状況をきちんと調査測定することが必要だと思います。

ただ私自身の研究ではその点について、5~10人単位の調査でなく、1対1のミニマムな社会的状況での研究をすることで、見えない影響力をあることを見いだせたわけです。

だからこそ、やはり実際に自分たちの気付かないところで何らかの情報がやりとりされていて、影響を与えていることを、本人たちに自覚してほしい。

経営者も教育者も、自分の分かる範囲で「いい雰囲気だった」とか「いい結果だった」と判断していると、とても重要なものを捨てているのではないでしょうか。

ただし、そのメカニズムを利用して売上を増やそうとすると、それもまた失敗するような気がします。一つのポイントとして、互いにそれを知らないからうまくいっているということもあると思うのです。

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