「安心」と「信頼」から見る、人の行動と社会の構造:異分野から経営のアタリマエを見直す 山岸 俊男①

安定した集団の中にいると「安心」はあるが閉鎖的社会になってしまう。しかし集団を超えて外と交流をしていくときには、その安心の呪縛から抜け出すことが必要である。その時に必要とされる「信頼」とはどのようなことか。そして現在の社会構造はどのようになっているか。社会心理学者の山岸先生にお話いただいた。

第四回 (1)「安心」と「信頼」から見る、人の行動と社会の構造

山岸 俊男
東京大学大学院総合文化研究科特任教授、北海道大学名誉教授。社会心理学者。
「安心社会から信頼社会へ」(中公新書)、「社会的ジレンマ」(PHP新書)等多くの著書がある。
2013年度文化功労者。

人の社会的行動

Q:先生の専門や今の研究について教えてください

人々の社会的な行動、特に社会性の部分です。たとえば500人くらいの人たちにいろんな実験ゲームに参加してもらって様々な心理尺度やパーソナリティ尺度、脳の構造データなどを取って、人々の社会的行動の原因を研究しています。

人は孤立して生きているわけでなく「社会的なニッチ」を作りながら生きています。つまり適応のための環境、居場所を作ってそこに適応できるような形で心のあり方を発達させて生きているのです。人間がそれ以外の動物と違うのは、社会や文化レベルで適応環境そのものを作り出していくところにあります。他の多くの動物は適応環境はすでに与えられている状態ですが、人間はそれだけでなく環境をつくりだしてもいます。動物でもたとえばビーバーは、ダムという適応環境を作り、それにあわせて毛皮や尻尾を進化させている例です。同様に人間も社会や文化を創り出しそこに適応できるように心の在り方を変え、どうしたらより良い適応環境を作ることができるのか、考えています。

 

なぜ人間は利他的なのか

Q:人間の特徴を教えてください

ほかの動物と比べて人間はかなり利他性が強いです。動物でも利他的な行動をとりますが、多くの場合は血縁関係のある相手に対してだけとります。互恵的に行動するような動物は非常に限られているのです。すると人間だけが変な行動をとっているということになります。一般には、人間は倫理を教え込まれているので利他的に行動するようになるとよく言われます。しかし、人間が利他的に行動する理由は、利他的に行動した方が自分にとって有利になるような環境を作ったからなのです。いろんな形の環境がつくられ、それぞれの環境に応じて心や社会的行動の在り方も変わってくるというのが基本的な考え方です。

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