Vol.1 情報 ~コラム:技術者の視点で世の中を俯瞰~森田さんに聞きました

Vol.1 情報

皆さんがイノベーションを起こしたり技術のコンセプトを考えたりされているのであるならば、情報を集めて咀嚼し解析していく必要があります。このコラムの読者のみなさんでしたら、いつも多くの情報を集めて勉強をされていると思います。おそらく各種の書籍やセミナーなどにも参加されているという声が聞こえてきそうですね。

しかしながら基本的な情報でも、私たちは、“知っとるようで知っとらん”ことが多いのです。普段触れている情報の中でも知っているつもりで見逃している重要な視点が我々の周りには多く存在します。そのような情報は、これからのイノベーションを考えていくうえでとても重要である場合が多いのです。

それでは、そんなことあるだろうかという皆さんにここで、私が質問をしたいと思います。

“原油は高いですか?”

最近はひところよりだいぶ下がってきましたが、現在バレル50ドルくらいですので“高い”という答えが返ってきそうです。でもほんとにそうでしょうか?それでは、1バレルって何リットルですか?というとほとんどの人が答えられません。そうです、原油の相場をバレルという意味不明の単位で変化としてはとらえられていても、実際の感覚ベースの理解単位としてはまったく理解しないで我々過ごしているのです。しかしながら、きちんとした情報理解をするためには、一歩踏み込んで、理解できる単位に落とした情報の把握が重要になります。1バレル=約158Lですので約38円/Lくらいになります。ここまで来るとガソリンの値段とかお米の値段と比較したりできて本当の意味での価格の値段が議論できるようになります。こうなるとひところのバレル100ドルというのは相当に高価格だということが皆さんも理解できたと思います。

ただしこれだけでは十分ではありません。世の情報には、誇張されていたり、情報の一面だけがとらえられているのも相当にあります。その代表例をご紹介したいと思います。そこでまた質問です。

“とうもろこしは高いですか?”

世界の流通型食料の代表であるトウモロコシの値段をもって“食料の対価”の質問をしてみました。(ちなみに食料は、石油と異なり地産地消型が中心でトウモロコシのように国際取引が多い作物はあまり多くないのが現状です。)WPI原油先物の値段を知っている人でもトウモロコシのシカゴ先物価格を知っている人はあまりおりません。これをご存じだった人は、投資が大好きな玄人か私のようにヲタクかのどちらかでしょう。また、世界の食料は常に危機的であり高騰が課題だと思われている方々にとっては、おそらく相当な高値を想像されたと思います。しかし、事実は少し異なります。トウモロコシは、今現在約4ドル/ブッシェルになります。—ここでまた意味不明の単位が出てきました。1ブッシェルは25.8kgになります。したがって、トウモロコシは、約19円/kgということになります。どうですか、実はトウモロコシは、原油より相当安いのですね!値段の変動もこの50年間原油よりずっと少なく供給も十分です。またそれを間接的に裏付ける事実として、“アメリカの農地の最大面積は休耕地”というものがあります。価格を維持するために生産調整する必要があります。その結果として休耕地が最大の農地利用ということなのです。人口が依然グローバルには増加傾向にあることは事実ではありますが、少なくともマクロには今現在人類は飢えを克服した状況にあることは間違いありません。このようなことは、プロである商社や専門家の間では当たり前の事実なのです。

どうですか、今回はとっても大雑把に情報の真の理解の重要性の入り口を示してみました。きっと、人類の基本である食料とエネルギーについてさえおそらく新たな発見をしていただけたと思います。皆さんも当たり前と思っている情報を違った面から深堀して新たな発見をしてみてはいかがでしょうか。必ず、新たなイノベーションの種が見つかると思います。

森田浩一氏

大手タイヤメーカーにて 高分子化学分野の技術者として実績を重ね、研究所長、役員などを歴任。
現在は大手音響・楽器・電子部品メーカーにてイノベーション推進を担当する。

“なぜだろう”の問いかけをキーワードに多様な方向性で情報を集め、一歩違う視点で常に考える。
猫をこよなく愛するハードロッカー。

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