株式会社竹中工務店 事例にみるKAIKA経営の実践

KAIKA Awards 2015ではKAIKA大賞2組織、KAIKA賞6組織、特選紹介事例3組織を選出いたしました。
こちらのコラムでは順次事例をご紹介しています

KAIKA賞 株式会社竹中工務店

「体験型研修施設による建築技術者の育成及び 教育関係者・学生への「建築」教育プログラムの実施」

【取り組み概要】

竹中工務店の技術実務研修センター  “想(おもい)”は、宝塚歌劇団のホームグラウンドである宝塚に近い、兵庫県川西市にある。40年ほど前に開発された住宅街から山あいに分け入った場所で、手入れの行き届いたゴルフ場のような佇まいである。その技術実務研修センターのなかには、実際の現場と同じ状況の中で体験型研修を実践するために、現物と同じ大きさ、材料のモックアップ施設が用意されている。その他、実際の作業を体験する施設、理論を理解するための教材等が用意されている。当研修施設はそのコンセプトと共に特許出願済みとなっている。その体験型施設の目玉は、RC集合住宅を対象とした、躯体・仕上工事の 施工途中の原寸大モックアップ(大きさ6,000×18,000  高さ 3,150)である。配筋、型枠、コンクリート打設後、仕上工事中の各段階を示した構成であり、そこに約170項目の施工ミスが内蔵されている。座学研修で学んで知っていることが現場で通用するか、現場での不具合を指摘できるかということを問いかけるプログラムである。現場事務所とほぼ同じ状態となっているため、冷暖房などは最低限しか完備されておらず、施設に入るときには当然ながらヘルメット着用である。170項目のうち、初期レベルの研修生は、数10箇所しか指摘できないという厳しい水準である。

研修プログラムでは、現場で管理・監督し、安全面で重視すべき要点を体感させようとしている。また参加 者間での意見交換などを強く意識させ、自らが主体的に考え、動くことが要請されている。現場監督が施工状況を把握できなければ、品質保証ができないということだ。やっているだろうということではなく、実際に基準通り施工しているかということの確認ができるような技能を習得する必要がある。

プログラムは設計・施工職務に該当する社員の必須研修となっていて、入社後3年・6年・9年の節目に、知っておくべき知識の習得・人の使い方・組織運営なども学ぶ機会となっている。冒頭、同社の会長が「ものづくりの基本は型から」 について話をするビデオを見て、必要性とトップの考えを再 確認するところから始めている。

使用される100ページほどのテキストはWEBから事前にダウンロードして、予習を求められる。3日間は研修棟での座学・ 理解度テスト・意見交換と施設を使った体験学習から構成されていて、最終段階でも確認テストがあり、点数の上位者から修了証が手渡される。

不合格の場合は、レポートが義務付けられ、上司のチェックを受け、事務局が採点し、合格レベルに至るまでフォローがある。合格者は社内広報されている。 講師は自前で実務と兼務で2年間の任期であり、教えること~ファシリテーション技法についての研修を受講した後、講義を担当する。各人の体験を再確認すると共に、伝承する役目がある。法令が変更された場合には、講師が責任を持ってカリキュラムを更新する役割を担っている。受講生からの意見として、施設・研修が、なかったときとの違いは、不良などの現物を見ることのできるということ、なにより体感することで強烈に意識づけられるという面がある。過去の失敗事例に直面すること、また技師長や受講生の体験話からの学びが大きいという。設備やカリキュラムの更新については、法令が変更されれば適宜行い、新しく技術開発されたもののお披露目の場ともなっている。

KAIKAポイント

「建築」について、社内の技術者育成のための集合教育、及び将来の建築技術者を育成するための社会全体に対する認知度向上の活動を実施したものである。建築技術者の育成は本来、個別の職場においてOJTで行うものである。 しかし、すべての技術者をばらつきなく育成するためには、基盤になる部分についての統一した教育が必要であり、集合教育の必要性がある。限られた時間の中で最大限の効果を得るために、「見て、触 れて、体得する」実践型の研修を企画し、施設・設備を活用した研修及び、その育成システムを創出した事例 である。また、経営理念である「最良の作品を世に遺し社会に貢献する」を実践するために小学校から高校までの教育関係者並びに将来の建築技術者となるべき建築を専攻する学生に対し、「建築」を理解し、技術に興味を持っていただくための教育プログラムを実施しているところにもKAIKA的な取り組みがみられる。

<本事例を取り上げた背景…審査委員会コメント>

社内外に広がりをもつ優れた内容である。またタイでも同様の取り組みを行っており、グローバルでの展開も感じられた。受け入れ範囲が広まり、業界の取り組みがグループ外への広がりが起こると、さらに価値が高 まるであろう。

技術研修では、難易度を分け、基準点を設けて、それをクリアするまでは修了証を与えないという姿勢で行われているため、確実に個人は成長している。また、全社的な取組みであるということにより、この取組みを通じて、「竹中イズム」がより深化している。それは積極性・自律性が多いに含まれるものである。また、研修を通じて協同での意識変化、技術理解が図られる点も特徴である。組織としての技術力が高まる有用な研修である。

「見て、触れて、体得する」という強いコンセプトのもとで実践されているので、継続性・発展性は非常に高いと思われる。大規模で網羅的に育成することを意図してつくられた研修専用施設の存在も大きく、体感による気づきの有効性は高く、ここまでやるかと思われるほどの力強さがある。また社内での定期必須研修として理解されており、社内での必要性認知も高い。社員が講師をするスタイルであるが、教えることで学ぶことが繰り返され、また自分たちが技術を守り、伝承する意識を強める影響もある。

現場レベルでの意識やスキルのばらつきが、技術研修を通じてなくなってきている。また、小中高校教員や 大学生を対象に建築を理解してもらうための教育研修を行うなどして、建築に対する見方が変化する機会を多くつくっている。単に自社企業のイメージアップを図る取組みではなく、建設業界全体のイメージ刷新および建築技術者の成長を促すための意識をもち、学会発信や他社への情報開示をしていることは、今後、社会的に影響が広がっていく可能性が高い。

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