<KAIKA大賞> 株式会社リバネス 事例にみるKAIKA経営の実践

KAIKA Awards 2015ではKAIKA大賞2組織、KAIKA賞6組織、特選紹介事例3組織を選出いたしました。
こちらのコラムでは順次事例をご紹介しています

KAIKA大賞 株式会社リバネス

「科学技術の発展と地球貢献を実現する~知のプラットフォーム型ベンチャー企業」

【取り組み概要】

同社では「教育応援プロジェクト」「研究応援プロジェクト」「創業応援プロジェクト」という3つの事業を柱に、年間200を超えるプロジェクトを展開している。

「教育応援プロジェクト」は、産業界と教育界が連携して行う、新しい次世代科学教育の取り組みである。中でも、創業当初から軸として行っている事業が出前実験教室である。子どもたちに向けて研究者が自らの研究の魅力を伝える活動を行うことで、次世代育成につながるのは勿論のこと、研究者にとっては非専門家に対して科学技術をわかりやすく伝える「サイエンス・ブリッジ・コミュニケーション」の能力が実践的に鍛えられる機会となる。この考え方を企業の研究人材育成にあてはめることで、教育応援プロジェクトは多くの企業を巻き込んで発展している。自社の理念やテクノロジーをわかりやすく伝え、その先にある未来を語れる研究員の人材育成の場として、企業における出前実験教室の活用が広がっているという。現在100を超える教育プログラムをリバネスは企業と共に開発しており、自社技術の情報発信や出前実験教室の実施、教材開発等を通じて子どもたちが科学技術を学ぶきっかけを育む「教育CSR活動」としてもその取り組みが注目されている。

「研究応援プロジェクト」は、“イノベーションの足りない日本に、研究者の力を” というスローガンのもと、産業界が主体となってアカデミアの研究活性化と若手研究者の成長を応援するプロジェクトである。リバネス が優秀な研究者とパートナー企業との連携をサポートしながら、企業側の研究開発のベースの底上げ、広い視点に立って自社を牽引していく人材の採用・育成、アカデミアとのアイデアの掛け合わせによるイノベーションの創出を目指していく。事業例として、産学連携の本来の趣旨である企業と大学の人材交流が進むような仕掛けとして、企業と若手研究者とをつなぐ「リバネス研究費」を運営している。ここでは企業は知財権を主張せずに関わるというルールのもと、自主性の高い若手研究人材や新たな研究シーズに多くアプローチできる同 社の研究プラットフォームを活用できる場となっている。

「創業応援プロジェクト」では、企業やアカデミアから生み出される隠れたシーズを見出し、事業化に向けた支援を行っている。アーリーステージのスタートアップや大企業における新規事業立ち上げの支援、シーズを社外から獲得するテクノロジーソーシングの取り組みなど、創業を多角的にサポートしている。その主要事業が、科学技術分野において情熱をもって世界を変えようとする若き起業家を育成するシードアクセラレーションプログラム「TECH  PLANTER(テックプランター)」である。ものづくり、ロボティクス、バイオ、 ヘルスケア、食、農などの領域を対象とし、ビジネスプランコンテストを経て、研究成果の事業化に向けて半 年以上の定期的なメンタリングを行っている。大手の事業会社がパートナー企業として参画している点も特徴である。資金面の支援のみならず販路開拓や商品開発などの具体的なサポートを事業会社が担い、新しいものを生み出すことに長けたスタートアップと規模拡大に長けた大企業が連携することにより、イノベーション創出を加速することが狙いである。 以上の教育、研究、創業という3つの事業基盤から生み出されるネットワークが同社の知識プラットフォームであり、個人の抱く情熱と課題意識を起点に、産業界・アカデミア・教育界隔てなく新しい事を仕掛ける舞台として活用が広がっている。

KAIKAポイント

科学技術を軸に、産業界、アカデミア、教育界を相互に結びつける知識プラットフォームの構築を通じて、最先端科学に関する教育活動や人材育成、研究支援、創業支援など多岐にわたる事業を創り出している。その根幹にあるのは「科学技術の発展と地球貢献を実現する」という経営理念である。最先端の情報を常に収集し、多くの研究者や企業とともに研究開発を進めながら、新たな産業の創出を目指すとともに、より多くの人々に分かりやすくサイエンスとテクノロジーについて伝えることで、より強固な産業基盤の構築に貢献することを 目指しており、社会性の高いその理念は経営陣から若手に至るまで浸透している。

社員47名の全員が博士号または修士号をもつ研究者集団(うち半数が博士)である同社では、その人員規模に比して多数かつ多様な事業が創出されている。年間200に上るいずれのプロジェクトもトップダウン的に始まったものではなく、すべて社員一人ひとりの「熱」から立ち上がってきたものである。

その背景として、新規事業の創出にあたり、既存事業の改善や効率化に適した「PDCA」サイクルではなく、個人の情熱や課題意 識を尊重した「QPMI」サイクルというイノベーションサイクルを独自に提唱している。これは質(Quality)の高い課題(Question)に対して個人(Person)が情熱(Passion)を傾け、信頼できる仲間(Member)と 共有できる目的(Mission)に変え、あきらめずに試行錯誤を繰り返すことで革新(Innovation)や発明(Invention)を起こすことが期待される、という考え方であり、社会的価値を持った事業を拡大し持続可能なものにする土台として注目されている。「QPMI」サイクルを自ら回し、社会課題を発見して新しい価値を生み出すことのできるリーダー人材を、同社では「サイエンスブリッジリーダー」として社内外で育成・認定を行っており、自立した個の成長が促されている。このように独自の問い(Question)を立て情熱(Passion)を持った個人が、互いに連携してプロジェクトを実行する「個のネットワーク型」と呼ばれる組織運営こそが、事業創出に長けた同社の組織力の基盤になっていると言える。

<本事例を取り上げた背景…審査委員会コメント>

科学技術系の研究者を企業や教育機関と結びつけることにより、新しい市場価値を創造、事業化するところに組織の社会的意義がある。論理性に秀でた個性的なマネジメントを展開しており、同種の社員(理系修士・ 博士中心)のモチベーションは高く、自前にて専門的なサービスを開発・提供しているのが特徴となっている。 背景として、創発的な研究&開発領域の課題解決に適した「QPMI」サイクルをユニークに提唱していることは、継続性・発展性の土台としても注目される。一般の「PDCA」サイクルでは目標に対する改善策の展開が主になり、個の力を引き出す活動においては個が埋没しかねない。

この「QPMI」サイクルを回すことで、社会にある課題を解決するとともに、異分野の架け橋となってイノベーションを創出することができる人材を育成する仕組みが機能している。「科学技術の発展と地球貢献を実現する」というビジョンに真摯に向かい事業 を動かす「組織の社会性」と、その理念に共感し、想いを持って入ってくる個々人の力を最大限発揮すると共に、個のネットワーク型の組織運営により組織力を高める基盤の両輪がまわる好事例として大きく注目された。

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