株式会社竹中工務店 事例にみるKAIKA経営の実践

KAIKA Awards 2016ではKAIKA大賞2組織、KAIKA賞4組織、特選紹介事例3組織を選出いたしました。
こちらのコラムでは順次事例をご紹介しています

特選紹介事例 株式会社竹中工務店

「『竹中技術研究所研修生制度』を通じた、人づくりと建築・まちづくりによる社会貢献」

【取り組み概要】

研修生制度は1959年に始まっている。その当時の社報には、「昔の職人は徒弟を養成するのに、徒弟が見よう見まねで技術を体得するまで待つやり方をしたが、現代の急激に進歩する技術はかかる悠長な教育方法ではもはや理解できなくなり、また企業経営のあり方からいってもかかる非効率な技術者の養成はもはや時代遅れである。当制度は、入社後数年を経た有為な若手技術社員の社内留学生制度ともいうべきもので、数年間の実務経験に更に高度な専門教育を実施することによって、将来の当社技術陣の中核的戦力を養成しようという構想に基づくものである。」という制度の趣旨が記されている。以来、55年にわたって取り組みが継続され、約800名の修了者を輩出している。作業所長・部長以上の約3割が研修の修了者である。

研修生は原則として勤続3年以上で満35才未満の技術系社員を対象に毎年公募されていて、10名程度が選定されている。全国の本・支店から2年という任期で技術研究所へ異動となり、建設材料部、地盤・基礎部、構造部、新生産システム部などの研究部門に配属され、指導担当者・グループリーダー・研究部長の指導を受ける。研修の主な内容は、①研究開発への参画(自主研究、受託研究)、②技術全般の知識・能力の向上(自主ゼミ、講習会、作業所見学会への参加)、③特許・学術論文の執筆、等である。

2年間の研修後は、派遣元の本・支店へ戻り、技術中核人材として現場で学んだことを活用することとなる。研修生制度は、全社が一体となった体制で推進されていて、本・支店と技術研究所という組織間の連携や意志疎通においても極めて有用な手段となっている。

KAIKAポイント

竹中技術研究所は、竹中工務店の中核的な技術開発機能を有し、本社事業の基礎研究から応用開発全般を担当している。千葉県印西市の千葉ニュータウンの丘陵地に人工丘を築いて建てられており、取り組んでいる。

テーマは建築のみならず広範な分野に広がっていて、竹中技術研究所の全景域社会、国内外の大学や研究機関等と連携して、時代の最先端ならびにその先を見据えた研究開発を進めている。現在の業務内容は、社会・企業のニーズに応える独自の新技術、新工法の開発(自主開発研究)、社内各部門からの委託による研究、試験ならびにコンサルタント業務、外部機関からの受託研究業務などである。

技術研究所発足当時の会社上層部の想いは、「若い意欲的な技術吸収力を新研究所の新戦力に活用する」と同時に、「技術に優れた人材の育成を図り、現業部門と新研究所の技術協力体制を機能させる」ということであった。このときに社長は、研究所は出来たものの、研究のための研究に偏り、現業部門の開発改善に役に立たない、遊離した研究所になってしまうことを一番心配していた。

研修生制度を通じ、本店、各支店・現場の技術がつながり、支店の提案力や顧客評価へ好影響が起きやすくなった。今後はさらにテーマ拡大や対象者数の拡大なども検討されている。

審査委員会コメント

本制度により、個人レベルでは、本・支店勤務では得られない多くの経験を通じ研修生が成長している。組織レベルでは、高度化・複雑化する社会や顧客の新ニーズ・課題に対し、専門技術や先端技術を習得し、人脈を広げた研修生が、本・支店の中核人材として組織的に提案・企画力を維持向上できる仕組みを築いており、高い次元で技術による課題解決を果たすなど、組織成果へ直結している。また、最新技術に関する地域間格差を埋める働きをしている。いろいろな地域での最新技術の普及促進につながっているし、全社的な技術の底上げならびに関係会社や協力会社への技術情報提供と技術力強化の効果も果たしている。免震技術などの継続的な研究と、現場での展開といった相互作用が働き、技術利用の地域間格差の是正につながっている。大規模な企画コンペで、研修修了生の提案が買われ実用化された事例もある。

地方事務所などの現場ではコスト削減意識が強くなりがちだが、現場に戻った元研修生は技術的な付加価値(安全や環境保全)を重視する姿勢を持ち帰り、そこに自社の存在意義があるという自覚を持って顧客提案をする状況がうまれている。

元研修生が現業部門に戻ることで技術力の底上げが実現されると同時に、研修中に獲得した人的ネットワークを介して現業部門と技術研究所の連携による大型コンペ案件への最新技術提案、研修生ネットワークを通じた全国の拠点間での情報共有など、技術面での組織力を発揮するハブとなっている。 人材育成に関して、一般的に言われるキャリア開発の仕組みが構築されていると考えられる。

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