コラム「働き方シフトによる組織づくり」Vol.4

Vol.4  「多様な働き方」を考える

組織の規模と限界について

人類学・進化心理学者であるロビン・ダンバー教授は、脳の前頭葉の発達と群れの大きさが比例することに着目し、組織や規模の限界をしめす150というダンバー数を提唱しています。つきつめれば組織とは、相互の動きが見える範囲でないとそれぞれの働きが見えず、大きすぎたり幅が広すぎる組織は効率がわるく生産性が落ちていくという数字です。なかなか示唆に富んだ考えです。

150という数が絶対的ではないとされますが、我々の経験値のなかでも実感できることです。10名くらいの組織ならば、声を掛ければ集うこともできるし、各人の体調や言いたいこともわかり、機動的に何らかの業務に取り組んでいくことはできます。100名程度であればなんとか名前と顔も一致するし、たがいに性格や特徴もわかるでしょう。しかしそれがさらに増加していくと、そもそも記憶の限界が生じるし、関わる密度は減少します。フェースブックの友人数も200名程度までの方が多いとされます。それ以上になると友達や顔見知りとして交流できる方ではなく、たんなる知り合いか友達の友達になるのでしょう。

組織規模を考えるときに、管理できる範囲という考え方があります。一人で組織を見ることができる範囲には限界があるから、機能や業務範囲別に小単位でひとまとめにして管理監督者を設定し、業務を遂行することが有効だという考えです。われわれはこういった考えのもと、組織を構成し日常活動を行っています。手が届いて、声が掛けられる範囲で業務遂行することはきわめて自然な感覚です。何をやっているかがわかることで、困ったことなどにも対応が進むでしょう。ところがこの話は、仕事が紙とボールペンそしてそろばんや電卓が普通だった時代の話です。現在ではパソコンがなければ業務が進まなくなっています。

ICTの発展により仕事が変わってきている

ある通信会社ではペーパレス化が進み、紙で打ち出すものは役所への提出書類と契約書関係に絞り込んでいます。机の上で何か書類を拡げて書き物をするならば、各人が何をしているかは明白ですし、ミスやトラブルの発生が周囲にもわかりやすく挽回や支援が可能です。PC上での作業は周囲からは、なにを起こっているのかがわかりにくく、対応が後手になることが多いようです。これはオフィスワークだけではなく、製造現場でも監視業務が多くなり、ブラックボックス化しているともいいます。さてこういった状況が何を意味するかというと、方針の提示や目標の設定そして業務遂行の進捗確認について、仕組みがない限り目に見えにくくなっている状況となっているということです。管理者の仕事とは部下へ仕事を割り振って業務遂行を効率的に進め、指導管理していくこととされていますが、実際には上司の役割はだんだんと変化しつつあるということです。仕事の見える化を進めていったとしても、そして仕事の進捗管理ができる仕組みが整ってきたとしても、管理監督者が部下の仕事をその場で確認したいと考えると、現在の仕事は立ちゆかなくなります。

TW/RWの本質のところ

人の評価とは、業務成果だけではなく、ひととの関わりや周囲への支援あるいは評判といった要素も高いといいます。そうするとできるだけ、職場に出て上司に顔を売っておこうという気になるのも事実でしょう。欧米のホワイトカラーの業務について、行動ベースの所までチェックすると非常にいやがるといいます。それは成果を出すことが本来の仕事であるので、裁量の余地を狭めないで欲しいという考え方です。

組織とは二人以上の方が共通の目的や方針に基づいて集い、それぞれの専門性によって仕事を分割し、成果を実現していくものです。ただしそれは、目的が達成されることが重要視されるはずです。実際的にTW/RWを使用する環境は整ってきています。ところが導入率は減少傾向のようです。また些末な導入条件面での議論や、対象者との関係が取りざたされることが多く、本質としての仕事の見直しについては、議論が進んでいません。突き詰めていけば、目の届く範囲でした仕事することを認めないのか、それとも身近で業務遂行していなくても、成果や過程を見て仕事ぶりを判断することを認められるかです。

201507 KAIKAコラム4

(「『働き方シフト』による組織づくり」研究会 事務局)

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