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死ぬときに、
自分がつくった商品で
枕元を埋め尽くしたい。

PROFILE

株式会社カネカ

環境安全部

企画担当 幹部職

野田 浩二

大阪大学 基礎工学部 合成化学課(修士課程)卒

1985年入社。化成品素材の基礎研究に10年ほど携わったのち、自身が開発した分子量を制御できるポリマー(機能性樹脂素材)を市場に広げるために、市場開発にも着手。以降、研究と市場開発の両面から、新たな製品開発に挑んでいく。社内で10件以上の特許を取得した者を「パテントマスター」と呼ぶが、野田氏は30件以上の特許を取得した「グランドパテントマスター」の称号を授与されている。

※記事は取材当時の所属役職のものです。

自分の夢を信じること。
それからがスタートだ。

「【カ】ガクで 【ネ】ガイを 【カ】ナエル会社」のCMでおなじみの、株式会社カネカ。樹脂やポリマーなどの化成品・食品・エレクトロニクス・合成繊維・医療材料など、日々の暮らしを支える様々な製品や素材に採用されている、日本屈指の原料メーカーである。高い商品力で豊かな社会に貢献していくために必要となるのは、コアになる研究開発と市場を開拓し広げていく力。自身のキャリアの中で、その両方を担ってきたのが野田氏である。

「わたしたちの仕事は、夢を語ることが大切だと思うんです。わたしの言う夢というのは、それが世の中に出ることで喜んでくれる人がいるかどうかということ。実現できそうかとか、誰に何を言われるかは関係ない。自分がその夢を信じていることこそが、会社を動かし、お客様を動かす力になると思っています。部下にも『まず俺を騙してください。俺がそれを信じたら一緒に走るから』といつも伝えています」

カネカには昭和の時代から「夢中人」という言葉がある。自由闊達を是とし、手をあげた人にチャンスが与えられる文化が根付いているのだという。その「夢中人」を地でいくのが野田氏である。自分が信じた夢を実現させるために、野田氏はこれまでに何度も研究室を飛び出し、会社を飛び出し、お客様のもとに向かって走っていった。

材料の声に耳を澄ますと、
必ず解決の糸口が見つかる。

野田氏は研究開発で大事にしていることがある。それは、『材料の声』を聞くということ。製品は売り込みたい長所で売れるのではなく、ニーズや特徴で売れる。その材料の良いところも悪いところも把握していくと、たとえ短所であってもそれが売れる理由になるという。

「1年で500回以上の実験を繰り返してデータを見ていると、材料の声がいろいろと聞こえてくるんです。こうすればできそうだぞ、と。それを信じて手を加えると、本当に完成する。そんな経験を何度もしてきましたね。開発は発明や発見のように思われがちですが、わたしはただ、材料の声を聞いているだけなんですよ」

野田氏によって生み出された製品の一つに、世界初のリビングカチオン技術でできたポリイソブチレンポリマーというシーリング材の原料がある。技術開発に成功し、設備も整えて安定した生産ができるようにもなった後も、肝心の売り先がなかった。そこで野田氏は自ら市場開発に乗り出す。このままではニーズが薄いとみると、原料だけでなく製品にまで落とし込んだ。メーカーがだめなら、さらに飛び越えて大手ゼネコンにも足を運んだという。自分でつくった製品を、自分で売り込む。これ以上の説得力はないだろう。

「採用された建築現場を撮影しに見てまわったりもしましたね。とにかく楽しくてしょうがなかったですよ。やりすぎて怒られることもあるんですが、まぁやってみろよと背中を押してくれる上司にも感謝ですね」

一緒に夢を見てほしい。
絶対に逃げ出さないから。

30件以上の特許を取得した社員に贈られる、「グランドパテントマスター」の称号を持つ、野田氏。研究者として10年、商品を世に送り出すために市場開発のキャリアを積んで20年。現在は環境安全部で企業CSRを守り、技術・品質を支えるためのガイドラインづくりにも携わっている。世の中に新しいものを生み出していきたいという熱い思いは、一瞬も揺るがない。

「とにかく夢を語るのが好きなんですよ。悪い言い方になりますが、お客様にも夢を見させることができなければ、よしやろうという話にもならないじゃないですか。もちろん、一緒に取り組んでくださったお客様には、絶対に背中は見せません。どんなことがあっても逃げ出さないのがわたしの主義です。でも、上司には現実の話をしないといけないから苦手なんですよね(笑)。説得のために、あちこち走りまわって暴走することもあるので、そこはできる限り改めないといけないのかなと思います。まぁでも、これからも夢を見続けていきたいですね。わたしが死んだ時に、自分のつくった商品で枕元をいっぱいにしたいんです」

新しいものは、時に型破りな方法でしか生まれない。周りからも“夢ばかり語っている”と言われてしまう野田氏だが、そんな彼だからこそ、新しいものを生み出すことができるのは言うまでもないだろう。既成概念にとらわれない野田氏が、今は会社のガイドラインづくりに携わっているというのだから、カネカの懐の深さとチャレンジ精神がうかがえる。これからもたくさんの人の夢を乗せて、新しい商品を世に送り出してほしい。