『KAIKA Awards 2020事例集』からのピックアップ⑤
アクロクエストテクノロジー株式会社(特選紹介事例)

「KAIKA Awards 事例集」は、2014年から始まった表彰制度で受賞した組織の事例を取り上げています。2020年度は21組織の事例を掲載しています。今回は、その中から、アクロクエストテクノロジー株式会社の事例をご紹介します。

全ての社員が、この会社で働いてよかった、と思えるための経営の実践

アクロクエストテクノロジーでは、会社設立時から、「エンジニアが楽しく仕事ができる会社」、「良い仲間たちと、定年まで働ける会社」をつくりたいという思いをもとに、当事者意識や貢献観を持てる全員参画経営の実現に取り組んできた。例えば、事業の方向性から施策検討まで全社員がフラットに話す全社員会議や、合議で評価や給与まで決まる全体査定などが挙げられる。そして、これらを徹底するために、相当数の対話と教育機会が設けられており、新入社員でも議論参画ができるような成長支援がなされている。経営への参画は、個人の自律性を高めるとともに、事業の活性化にも結びつく。また、自由闊達な議論ができる風土は、組織の一体感と多様性の両立を生み出す。さらに、経営思想に共感する他社との交流も積極的に行われており、働きがいを軸にした経営の実践の輪を広げている。

受賞ポイント(KAIKAな視点・取り組み)

アクロクエストテクノロジー株式会社は、IoTを活用したサービスパッケージ、データを活用した企業のビジネス変革、画像・映像解析AIを得意とするシステム会社である。従業員の多くは、大学院卒・理系で、技術力を活かしてた仕事を行っている。一般的には、専門性志向・個人志向になりがちな集団であるが、一人ひとりが貢献意欲を高く持ち、経営に積極的に参画し、多様性を尊重する組織として成長してきた。
特徴的なのは、「MA(Meeting of All staff)」に代表される全員経営の実現と、フラット型の意思決定ができる仕組みである。これらの本質的な実現は、全員が何でも言い合える状況が整わないと成立しない。同社はその点を、一人ひとりの成長をしっかりとケアしていく体制・環境づくりによってカバーしている。
その軸となるのが年間100回以上も行われる対話型研修だ。答えのない問いを繰り返すなかで「Acro人」としての共通軸が醸成されていく。また、相互評価・フィードバックする「Happy査定360」は、実力に見合った納得のいく評価となる仕組みとしても注目される。 
全員参画型経営は、手間のかかる取り組みでもあるが、結果として、経験が積み重ねられることで、各種施策への運営成熟度が高まり、流動的なIT業界のなかにおいて、社員一人ひとりの働きがいの追求、長期コミットメントが実現されている点で示唆に富むと言える。

取り組みの背景と内容

同社が、「この会社で働いてよかった」と思える経営を創業当初から標榜したのは、経営者2名が前職時に、自由な発言が否定されたことに対して、強烈な問題意識を抱いたことに基づく。目指す経営スタイルを実現するために重視したことは、「自分もこの会社をつくっているという当事者意識」「自分がこの会社で役に立っているという貢献感・居場所感」「社員一人ひとりの成長をよく見ているというケア環境」「価値観の合う、良い仲間と切磋琢磨できる制度」「個人に寄り添う福利厚生が生み出す、安心・健康な生活」という5つの要素である。
特に、当事者意識と密接に関わるのは、MAと呼ばれる全体会議である。話し合いたいことがある社員は、事前に議題と資料を提出し、認められれば会議で発表する。それは、社長も新人も同等で、同じように資料を提出し、採択の一票を持つ。例えば、コロナ禍における働き方についても社員から提案があり、経営者の想定より厳しいガイドラインが設定されたこともある。一方、こうした過程で、一様の価値観が押し付けられないよう、「無理して言わなくてもよい」といった配慮もなされている。結果的に多様性が尊重される風土となり、例えば、アスペルガー傾向があるようなメンバーも排除されず、特性を活かせる仕事で活躍する状況が実現されている。
こうした経営の背景にあるのは、採用と教育研修だ。採用時には、できるだけ多くの社員と会う機会をつくり、自社の価値観に共感できるかどうかの見極めに時間をかけている。また、研修については、人間力を高める「プロ研(プロフェッショナル研修)」、仕事力を高める各種スキル講習会、技術力を磨く技術講習会など、充実しており、特にプロ研は内定者からベテラン社員まで、職位ごとに週1~月1回、必ず開かれている。また、主体的に外部研修や学会に参加する社員も多く、学んできたことは社内でのフィードバック会を通じて共有されている。

取り組みの成果や波及効果、推進ポイント

自律性推進、多様性尊重の風土によって、自分の仕事、給与、キャリアに納得しながら進む社員が増え、以前に課題であった離職率は、著しく低下した。すべての個人記録を残す「社員ファイル」と、その中に綴じ込まれている「活躍シート」には、個々人の成長の記録がびっしりと書き込まれている。こうした成果は、「働きがいのある会社」ランキング小企業部門で1位を3度受賞するなど、対外的にも高く評価されている。
また、全員経営によって、お互いに強み・弱みを見せ合うこと、フィードバックし合うこと、助け合うことが継続的に醸成されている。変化に対して相互補完しながら対応する組織力とも言える。これはシステム開発業務におけるチーム力でもある。当初は、全員会議や全員査定にかける時間はかなり多かったが、最近では、全員会議を2時間程度、全体査定を1日で実施できるほどに、運営の成熟度が高まってきている。
こうした経営に注目し、学びたいという会社が増えており、社内見学会や経営者向けの「組織いきいき勉強会」を開催するなど、自社のノウハウを共有する取り組みを積極的に行っている。見学会には、日本ならびにアジアから、約460社が視察に訪れているほか、勉強会は2016年から毎年続いている。他社との接点は従業員にとっても刺激あるもので、自社への愛着を深める機会にもなっている。
また、学生に対して講義やセミナーをする機会もある。就職活動時に働く環境や組織のあり方に意識が向かず、結果的に早い段階で退職する例はよく聞かれるが、そうしたミスマッチを起こさないためにも企業の見方を伝えるべきだという意識も強い。大学への働きかけは、ミャンマーでも行っており、教育カリキュラムの作成などに協力している。こうした取り組みの影響でミャンマーでの雇用も順調で、多様な組織形態の実現が進んでいる。

審査委員会・アワード事務局からの所感コメント

創業時から培ってきた風土と目指す経営が実現できている理由には、採用時に自社をオープンに紹介し、自社にあう誠実な人材を採用し、内定期間中から時間をかけて、自社の考え方を教育する過程がある。同時に、日常的な上司・同僚とのやり取りや、プロ研修での刺激という複合的な工夫がある。さらに、このような土壌を耕し続ける「経営者の根気」も非常に大きな要因と言えよう。
同社独自の経営スタイルと、それにより実現できている先端的業務の実態は、中途採用・即戦力志向の強い中小IT企業群で差異化をするポイントになっており、今後の経営のあり方として参考となる事例と言える。
おおらかな笑い声が耐えない環境で、社員がいきいきしている様子は、フラット型、ティール型などの新しい組織運営を考えるうえでも参考になる。今後、組織がさらに拡大していくなかで、組織運営の一層の進化が遂げられていくことを期待したい。

「KAIKA Award 2020 事例集」は下記からダウンロードいただけます。
https://kaikaproject.net/kaika-awards-download/

KAIKA Awardsの過去の受賞組織一覧は下記をご覧ください。
https://kaikaproject.net/awards/history

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