インターナル・コンサルタント養成のススメ~
第9回: ICに求められるインタビュー・スキル(3)

2021年4月15日

こんにちは、チームスキル研究所の田中信です。

前回は改革※1の企画及び実行の両段階で鍵となる「インタビュー・スキル2」として、「インタビュー企画の作り方」についてみてきました。

次段階となる実際のインタビュー時のご相談として、「どのようにインタビューを進めていけば良いか?」があります。今回は、「インタビュー対話の進め方」、「改革に否定的な人への対応」、「インタビュー結果のまとめ」などについてみておきたいと思います。

実際にインタビューを進める上で大事にしたい点

実際のインタビューを進める際に大事にしたいのは、話の「流れ」です。限られた時間内で、インタビュー対象者に積極的に話をしてもらうためには、単にインタビュー項目(聴きたいこと)を質問し、その質問に対するコメントを聴き取るだけでは充分とは言えません。相手の特性に見合った話の流れを考慮してインタビューを進めることが重要です。

相手の特性を考慮するために活用できる考え方とは?

では、相手の特性をどのように把握し対応すれば良いでしょう? このような時に活用できる視点として「思考スタイル」があります。今回はハーマンモデルを用いて説明したいと思います。ハーマンモデルにはA,B,C,Dの4つの思考スタイルが提示されています。Aは論理・理性脳、Bは堅実・計画脳、Cは感覚・友好脳、Dは冒険・創造脳と言われています。ハーマンモデルの詳細については多くの解説資料※2がありますので、ここでは割愛しさせていただきます。

相手の思考スタイルに沿った「対話の流れづくり」とは?

では、相手の思考スタイルに沿った形で対話を進めるには、どうしたら良いでしょう。ここからは前述のハーマンモデルを用いた思考スタイルの違いに対し、どのように対応すれば良いかについて説明していきます。

ここにインタビュー対象者として思考スタイルの異なるAさん、Bさん、Cさん、Dさんの4人がいるとします。それぞれがハーマンモデルでいう思考スタイルA、B、C、Dを持つ場合の対応方法について考えてみましょう※3

インタビュー導入部では、思考スタイルをプロファイリングする

まずはインタビューの導入部分での対応について解説します。

インタビューの導入時には、相手の大事な資源である「時間」をいただくことへの感謝から始めることで、それに対する相手の反応を得ます。

「今日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございます」というこちらの言葉に対し、思考スタイルAさん、Bさんは特に反応はなく、CさんDさんは、「こちらこそ、ありがとうございます」、「どうぞよろしくお願いします」などの言葉や、笑顔といった表情などの反応を得ることができる傾向があります。

この時点で、AさんとBさんはインタビューの内容自体に重きを置いている思考傾向であること。対してCさんDさんはコミュニケーション自体に重きを置いている思考傾向であると推定できます。このような推定を用いて、早速インタビューに入るか(Aさん、Bさん)、コミュニケーションで関係づくりをしてからインタビューに入るか(Cさん、Dさん)というように相手の思考スタイルによって対話の流れを大きく2通りに調整します。

次に、インタビューに向けての準備状況にも思考スタイルによりバラつきがあるため、個々の準備状況を把握する必要があります。導入時、AさんBさんはインタビューの内容自体に重きを置いている様子でした。その中でもAさんはインタビューがなぜ必要か、目的や結果を重視するため、自分なりにインタビュー目的・ゴール達成のために、何が必要か?について考えてきてくれます。一方で、Bさんはインタビューの制限時間内で、かつ正確に回答することを重視するため、予め質問への回答内容を準備してくる傾向があります。人によっては書面を用意して来るなど、きちんと準備をしてからインタビューに臨もうとします。

Cさん、Dさんは、導入時のコミュニケーション自体に重きを置く傾向にありました。Cさんは、どうコミュニケーションするか、準備段階においてもインタビューに関わる「人」や表現の仕方に関心をもって準備をしています。一方でDさんは、準備段階ではインタビューへの関心が低く、関心が持てるか否かは当日のコミュニケーション次第という感覚的な傾向があるので、ほとんど準備のない状態で臨みます。

このことから、準備状況への対応と対話を進めていくにあたり、以下のように対話を工夫することができます。

Aさん…インタビューの導入段階において、社交辞令や関係性づくりのための対話に時間をかけるよりも、インタビューの開始から早い段階で、今回の目的や改革のゴールをしっかりお伝えすることが大切です。Aさんからは、それを聞いた際の率直な感想や意見をもらえる可能性が高くなります。目的やゴールが分かれば、発言や協力を惜しまない傾向があるので、いかに目的やゴールを共有していくかがキーポイントとなります。また意見に対して、その背景や理由についても明確な主張を持つ傾向があるので、「そのご意見の背景や理由についてお伺いできますか?」と言った背景質問を用いることで改革活動をデザインする際のエビデンス情報も獲得できる可能性があります。

Bさん…事前案内に沿って予めしっかりと準備をして臨んでくれるBさんに対しては、準備してきていることを尊重して事前のご案内通りの順番でお話を伺うことが、思考スタイルに沿う対応です逆に、事前にご案内した事柄以外について質問が必要になった場合は、コメント準備ができていないため回答に窮することが予想されます。その場合は、インタビュー後のメールで追加のご意見を依頼するなど、回答までに時間的な余裕を取ることにも配慮しましょう。一般的には事前にコメントを準備していただいているため、予定時間より短く済む可能性があります。効率的なインタビューへの協力に感謝し早めに切り上げるなどの柔軟な対応が求められます。Bスタイルの傾向が強い方の中には、残り時間を別の話で埋めるような行為に対し違和感を感じる人もいるので注意が必要です。

Cさん…事前のご案内段階から導入時のコミュニケーションまで、Cさんの思考は、インタビュー内容や改革テーマよりも「どのようなコミュニケーションが成されるのか」「自分の言動で周りや相手の反応がどうなるのか」という部分に向けて働く傾向にあります。よってCさんの発言へはその都度明確なリアクション(うなづき、相槌、表情の変化など)を示すことで、対話が円滑に進みます特に賛否が大きく分かれるような質問の場合は、反応を気にして本音が出にくい可能性が高いため、答えやすい質問から順番に行い、その都度のリアクションによって安心感を与えた上で、大事な質問を行うなどの配慮も必要です。自分の意見がポジティブに受け取られていると感じる対応(「なるほど」、「そうなんですね」など)をすることで可能な限りCさんの本音を引き出すようにすることがポイントです。

Dさん…導入時のコミュニケーション次第で、関心が持てる場合には協力しようという思考スタイルのDさんに対しては、こちらの目的についての説明や、質問計画にこだわり過ぎずにコミュニケーションを始めることが大事です。Dさんは予定調和的な進め方にはあまり関心がありません。よって序盤はDさん本人が関心を持っていそうな話題から入ると有効です。具体的には、最近の関心事や周囲の状況、課題認識などから質問していきます。そうすることによって、Dさんの対話に対する興味・関心を引き出すことができ、思考が活性化した状態でインタビュー内容に臨めるようになります。Dさんの持つ視点や関心に基づいて対話を進めていけるか否かがポイントとなります。

このように、相手の思考スタイルに沿ったインタビューの進め方や質問の観点、言葉遣いや対話テンポなど、相手の特性に関する情報を得ながら、かつその特性に沿った対応をすることで、限られた時間で相手から最大限のコメントを引き出せるようになります。

上記のような対話の流れ調整や対応に関して、留意しておきたい点が二つあります。一つ目は、上に挙げた思考スタイルが一つ該当する場合もあれば、複数該当する場合もあるということです。また、人の思考スタイルは永続的なものではなく、時期やその時に担当している業務特性によって変化することも留意しておきましょう。二つ目は、IC自身にも、思考スタイルの優位性があることです。流れを調整する側である自分自身にも思考スタイルがあるという自覚をした上で、対話の内容を俯瞰的に捉えていく必要があります。

否定的な考えを持つ人の対応

ここまでみてきた個々の思考スタイルに沿っての流れの調整や対応、俯瞰的な捉え方などの他に、必要性の高い「否定的な考えを持つ人への対応策」についても、改めてまとめておきます。「改革やインタビュー自体に否定的な考えを持つ人への対応と捉え方」については、第7回、第8回でもお伝えしましたが、今回は、インタビューの対話内で否定的な考えが挙がった場合の実践的な対応についてです。

相手からの否定的な意見や現状への不満などに対して、ICは防衛・説得・論破などを行うのではなく、インタビュー対象者が段階を踏んで協力的に変わる可能性を生み出すために長期的な視点を持って関わることが大切であることは、以前お伝えした通りです。その実践的な観点として、大きく4段階に分け、受容⇒尊重⇒背景共有⇒発見として捉えていきます。

まずは、否定的意見や不満に対して個人的感覚を介入させずに、その情報自体を正確に「受容」することが必要です。具体的には、挙がった発言そのままの言葉を用いて反復するなど、相手の伝えている内容を大切に扱うように心がけましょう。次に必要なのが、「尊重」です。否定的意見や不満を伏せてしまう人もいる中、対話内で打ち明けてもらえる機会はとても貴重です。どのような内容であれ、発言していただけたことを尊重し、「なるほど」と言った反応を用いて相手にも伝えるようにしましょう。そうすることで、その後に必要な「背景共有」を円滑に進めることができます。相手を尊重した上で、否定的意見や不満を持つに至った背景、その問題点に対する見解、独自に取り組んだことや、今日に至るまでの経験など、より多くの情報を共有してもらうことで、そこに存在する真の問題・課題は何なのか、について深く考えることができます。これによって最後にもたらされるのが「発見」です。否定的意見や不満の背後には、大事な視点が含まれています。見落とされがちな点を明らかにすることで、より合理的、効果的な改革にした例は多数あります。インタビューで聞かれる生の声は、様々な改革手段に気づく機会とも言えます。ICが持つ仮説も大切ですが絶対的に正しいとは限りません。インタビューは、あくまで改革自体の質を高めていく過程のひとつであることを忘れず、対話からより多くの発見をしていくことが大事です。

インタビューの終わり方について

インタビューを終える際、いただいたコメントを今後どのように扱っていくのかをお伝えする必要があります。個別のインタビュー記録として使用する場合は、完成前に掲載内容の確認をお願いする作業が発生するため、依頼しておきます。名前が入らずに、コメントだけをまとめた報告書にする場合にも、その旨を伝えておきます。対象者への個別報告の必要性が無い場合には、今後の改革企画・実行の過程で活用させていただく旨を伝えます。最後は、今後の改革推進に際しての連携・協力や継続的な意見交換のお願いと、本日のご協力へのお礼で締めます。

改めてなぜインタビュー・スキルが重要なのか?

ここまで3回にわたりICにとってのインタビュー・スキルについてみてきました。第7回でも触れたとおり、インタビューを、相手の内面(Inter)にある意識・無意識のものを見る(View)行為としてとらえた場合、その内容や価値はこの数年で大きく様変わりしました。

それは、人と組織の力を引き出す職場マネジメントや組織改革の必要性が高まるにつれて、個々の声を聴くこと、その内容を組織活動に活かしていくことの重要度が高まってきているからです。

これまで自分ではやりたくても成し得なかった切り口で自組織を変えることができる――その希望を見出す機会としても、インタビューが将来的に組織成果を出していくためのレバレッジとなり得ます。そしてこのインタビュー・スキルは第一線のマネジャーにとって、今後必須のスキルとなる重要なものであり、ICがその重要スキルをデモンストレーションする機会にもなるのです。

インタビュー後も続く改革推進に向けて、ICとチームとのより良い関係性構築や組織改革力の強化に繋がるよう、ご参考になれば幸いです。

今回は、「インタビュー対話の進め方」、「改革に否定的な人への対応」、「インタビュー結果のまとめ」についてみていきました。次回は、ICに求められるスキルと手法について引き続きみていきたいと思います。


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※1:  このコラムでは、インターナル・コンサルタントが扱う「変える」ことの表現として主に「改革」という表現を用いて説明します。実際には「改革」のほか「改善」、「変革」、「革新」、「革命」などが変える対象に含まれます。

※2:  ハーマンモデルについては、以下のような文献・資料URLがあるので参考にしてください。
・書籍「ハーマンモデル-個人と組織の価値創造力開発」、ネッド ハーマン(原著)、高梨智弘(翻訳)、東洋経済新聞社
・ハーマン・インターナショナル・ジャパン ホームページ URL: http://www.herrmann.co.jp
・ハーマンモデル理論を用いた思考特性の簡易診断ツール例 : 効き脳診断(BRAIN)
URL: http://www.fortina.co.jp

※3:  実際の人の思考スタイルはA、B、C、Dという単独スタイルだけではなく、AとCの二重優勢、ACDの三重優勢、ABCDの四重優勢などのスタイルがあります。よって、一つの思考スタイルに決めつけるのではなく柔軟に対応することが求められます。

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★第1回:インターナル・コンサルタント(IC)とは?
https://kaikaproject.net/column/internalconsulting01/

★第2回:社外コンサルタントと社内コンサルタントの違いとは?
https://kaikaproject.net/column/internalconsulting02/

★第3回:インターナル・コンサルタント(IC)の機能とは?
https://kaikaproject.net/column/internalconsulting03/

★第4回:改革の企画段階(フェーズ)で大切なこと
https://kaikaproject.net/column/internalconsulting04/

★第5回:企画段階でインターナル・コンサルタントに求められるスキル(1)
https://kaikaproject.net/column/internalconsulting05/

★第6回企画段階でインターナル・コンサルタントに求められるスキル(2)
https://kaikaproject.net/column/internalconsulting06/

★第7回: ICに求められるインタビュー・スキル(1)
https://kaikaproject.net/column/internalconsulting07/

★第8回:ICに求められるインタビュー・スキル(2)
https://kaikaproject.net/column/internalconsulting08/

★第9回:ICに求められるインタビュー・スキル(3)
https://kaikaproject.net/column/internalconsulting09/

★第10回:改革活動における企画段階の全体像を俯瞰する(1)
https://kaikaproject.net/column/internalconsulting10/

★第11回:改革活動における企画段階の全体像を俯瞰する(2)
https://kaikaproject.net/column/internalconsulting11/

★第12回:改革活動における企画段階の全体像を俯瞰する(3)
https://kaikaproject.net/column/internalconsulting12/

★第13回:ICに求められる5大スキル領域とは
https://kaikaproject.net/column/internalconsulting13/

★第14回:インターナル・コンサルタント(IC)に必要なマインドセット
https://kaikaproject.net/column/internalconsulting14/

一般社団法人チームスキル研究所 代表理事 コ・ファウンダー
田中 信(KAIKA Award検討委員)


大学卒業後、芝浦工業大学大学院 工学修士課程修了。日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて20年以上にわたりコンサルタントとして企業・組織の改革・改善活動の支援に関わる。対象は、研究開発、商品開発、新規事業開発など企業・組織内での「新しい動き」をつくる活動を中心とする。  人と組織の力を最大限に引き出す支援として、キヤリアビジョン開発、コーチング、ファシリテーション、リーダーシップ、社内コンサルタント育成などのヒト系ソリューション事業を開発してきた。  2009年独立。現在までエグゼクティブ・コーチング、職場開発(チームスキル)、社内改革推進者養成や内製化など改革支援を推進。2012年一般社団法人チームスキル研究所を設立。その後、日本経営支援センター執行役、wevox組織・人財アドバイザーを兼務、現在に至る。


★この執筆者へのお問い合わせは以下問い合わせフォームよりご連絡ください。
https://kaikaproject.net/contact/

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