コラム:働き方変えてみました◆コミットメント

コミットメントは希釈されない

2020年6月1日

「コミットメント」という言葉は、一昔前の日本では、一般的なビジネスシーンにはあまり馴染みがなかった言葉です。政治や金融の世界で使われていたくらいでしょうか。辞書的には「commitment」には、「委託・委任・引き渡し・約束・公約・責任」といった意味があるようです。今ではカタカナ英語として、かなり広まっています。カルロス・ゴーン氏が日産自動車の経営改革を進める際に使ったのが契機かと思います。

さて、ここで質問です。「非正規社員は、正社員よりコミットメント力が弱いのでしょうか。」

 なぜ、こんなことを尋ねるかというと、私が、現在のような働き方にシフトした当初、間接的に言われたことがあるからです。「あいつは社員ではないから、このプロジェクトを任せきることはできない。コミットするとは思えない」という指摘です。

 当時の私の結論としては、「そんなことがあろうはずもない」でした。逆に、非正規社員や、外部の協力者の方が、コミットメント力が強いということもありませんが。要は、相関はないと思うのです。極端な例えですが、時間的にも身体的も心理的にも、ひとつの組織に100%を費やしている人材と、50%しか費やしていない人材とでは、後者のコミットメント力が前者の半分なのか?というと全くそんなことはない。「コミットメント力は希釈されない」という話です。

現在も私としての結論に変わりはありませんが、ここで正規、非正規という話ではなく働き方という話に変わります。私は、現在のような働き方 ―ここでは複数の組織の名刺を持ち、複数のコミュニティーとパラレルに関係を持つような働き方を強調します―になった身として、確信をもって「コミットメント力は希釈されないどころか、むしろコミットメントの精度が高くなった」と言えます。

なぜなら、「コミットメント力」は単に想いの強さや決意だけで決まるものではないからです。よく見聞きする「この数字にコミットするのか?」というコミュニケーションは、上司や会社への忠誠を確認している(半分、言わせている?)のではなく、あくまでも仕事における結果と成果に対する責任のハズです。そして、成果の出し方、責任の果たし方には、文字通り山ほど工夫の余地があります。つまり、コミットメントには「コミットメントの仕方」があるのです。

 働き方に幅を持っていればいるほど、それだけ多くの「工夫の仕方」との接点が増えます。それだけではなく、自身の中で「考え方」のシナジー(相乗効果)が生じます。この「考え方」のシナジーが今回、最も言いたいことです。シナジーによって、関わりを持つ組織や案件それぞれに対して、課題解決の選択肢が増えてきます。なおかつ、自身のバランスもセンスも磨かれます。結果として、仕事や案件、関わるコミュニティーそれぞれにおいて自身の貢献・成果の「出しどころ」(要は強みですが)がわかってくるのです。

 みなさん、ひとつの組織に属すのは危険です、辞めましょう!と言っているわけではありません。「考えること」を止めなければ、本コラムでこれまでも書いたように、正規・非正規社員であっても、ひとつの組織に継続して在籍しつつも、働き方を“質的に”シフトさせることはできます。つまり「考え方」のシナジーを生じさせることは可能です。それは、コミットメントの仕方を増やすことに繋がりますし、なにより自身のキャリアを豊かにすると思うのです。

 今後、専門スキルを活かした副業・兼業といった働き方が広がっていくことも視野に入れると、本当の意味での「コミットメント力」が一層、問われるのではないでしょうか。

大橋 新 氏(フリーコンサルタント)

大学卒業後に金融機関・教育会社、シンクタンクを経てフリーに。 ド文系で特別な技能や専門分野を持たず、かといって特別に優秀でもないアベレージ人材。 企業に所属してフリーに、本人が経験した働き方のシフトから、「働き方改革」をどのように捉え、どのように考えているか・実践しているか、を言い散らかすコラム。
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