『KAIKA Awards 2020事例集』からのピックアップ③
株式会社大川印刷(KAIKA賞)

「KAIKA Awards 事例集」は、2014年から始まった表彰制度で受賞した組織の事例を取り上げています。2020年度は21組織の事例を掲載しています。今回は、その中から、KAIKA賞を受賞した株式会社大川印刷の事例をご紹介します。

やってみよう、が世界をかえる大川印刷の挑戦
~コロナ禍でも前進する人間力~

大川印刷は、2005年の現社長就任時に、自社のパーパス(存在意義)を「ソーシャルプリンティングカンパニー®(社会的印刷会社)」と定義付け、本業を通じた各種の環境印刷の推進や社会課題解決に取り組んでいる。CSR活動の一環として、地域や社会に必要とされる人と企業を目指す取り組みを謳い、環境経営を積極的に推進してきた。
2017年からは、SDGs(2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標)を経営計画に取り入れるとともに、目標達成にアプローチした、「SDGs経営計画プロジェクト」チーム活動を開始している。従業員が主体となって活動し、ステークホルダーと協働しながら、いろいろな課題を発見・解決していくことで、組織と個人が継続的に成長している。

受賞ポイント(KAIKAな視点・取り組み)

大川印刷は1881年に横浜で創業した140年の歴史を誇る老舗の印刷会社である。地元横浜を代表する食品の包装紙などを印刷していることでも知られている。印刷業界を取り巻く状況は、広告販促物需要が落ち込むなど、厳しい状況に置かれている。業界で確固たる地位を築いてきた大川印刷も、流れに抗うことは難しく、業績にも影響があった。そうしたなか、2005年に社長が交代し、6代目となる大川哲郎氏が就任。環境経営や社会課題解決に取り組み、従来型の印刷業から「環境印刷」を柱とするべく転換を図ってきた。環境を武器に新たなビジネスモデルを構築し、顧客から支持・選択される立場を確立するに至っている。
例えば、自社事業により排出される年間のCO2をカーボン・オフセットするCO2ゼロ印刷を実現。あるいは、違法伐採していない適切に管理された木材チップを原料とするFSC®森林認証紙や、石油系溶剤0%インキの使用を進めている。
同時に、全従業員が参加してSDGs経営計画づくりを行っている。社内外に向けて、SDGsを学ぶ工場見学ツアー、サルベージパーティー開催など食品ロス削減への取り組み、CO2削減のため車使用を制限するノーカーデーの定期開催、サプライチェーン企業との環境意識勉強会の開催など、各種の従業員主導でのボトムアップ型SDGsプロジェクトが立ち上がっている。

取り組みの背景と内容

先述のとおり、印刷業を取り巻く環境は厳しい。同社では、社長交代の機に、自社のパーパス(存在意義)を「ソーシャルプリンティングカンパニー®(社会的印刷会社)」と定義し、本業を通じた社会課題解決に向けた取り組みを強化。ステークホルダーと協働しながら、従業員主体の活動を通じて、地域や社会に必要とされる人と企業を目指して、挑戦し続けている。
「環境印刷」に関しては、印刷事業により排出される年間温室効果ガス(CO2)を算定し、全量をカーボン・オフセットしている。製造時点で直接的に発生するもの、間接的に発生するもの、自社以外のビジネス・チェーンで発生するものの3つのスコープにおける削減を包含している。
また、大川印刷では、印刷工場特有の石油インクの臭いがしない。2005年から取り組んでいる環境経営を示す一つの試みで、石油系溶剤を含まないノンVOCインキを積極的に使用しているからだ。また、産廃物ゼロを目指し、資源ゴミの分別と計量を日常的に実施している。環境問題は、自社だけで完結するものではないため、ビジネスパートナーを意識づけることにも注力している。
印刷物に必要不可欠な原材料である紙に関しては、違法伐採していない適切に管理された木材チップを原料とするFSC®森林認証紙の使用を推奨するとともに、植樹・育樹に関する催しに従業員やその家族が参加している。
さらに、2017年からは、SDGsの目標達成にアプローチした「SDGs経営計画プロジェクトチーム」の活動をスタート。パートタイマーを含む従業員全員で参加する「SDGs経営計画策定ワークショップ」を開催し、「うまくいっていること」「うまくいっていないこと」「今後取り組みたいこと」「その障害となっていること」の4項目について、SDGsに結び付けながら話し合い、自分たちが社内を、そして社会をよくするためにはどのような取り組みが必要なのか、社会や地域が抱える課題を抽出し、毎年従業員の立候補者が課題解決のプロジェクトを立ち上げ、取り組みを進めている。
2018年からは、社内外へのSDGs啓発を推進する「SDGs Fun to Workプロジェクト」を開始。パート従業員とその子どもたちが参加する「学びにおいでよ!SDGs工場見学ツアー」や、地域の中高校生を対象とした地域探求学習を実施し、SDGsの学びの機会を提供している。

取り組みの成果や波及効果、推進ポイント

顧客から選ばれるために競争力を継続的に強化することは簡単ではない。コスト削減・品質向上あるいは納期短縮など、顧客ニーズに応えることが一般的だが、状況や保有資源次第では競合に太刀打ちできないことも多い。そして、安易な対策は組織の疲弊を招き 、中長期的な業績悪化にもつながる。大川印刷の環境を重視した経営は、顧客が従来重視していなかった視点を示し、他の事業者との違いを打ち出すことに成功している。
業界の中でも一歩進んだ活動を推進することで、地球温暖化対策などに目を向け始めた会社や団体から注目を集めている。環境に目を向ける会社からの問合せも増加し、新規顧客の開拓にもつながっている。さらに、環境を重視する会社であるということで、新卒採用に結びつくなど良い影響も見られている。
また、様々な活動に従業員が主体的に参加することで、会社として取り組むべき軸への理解が深まり、使命感をもって働くことができるようになってきている。顧客や地域社会、環境のことを自分事として考えて行動する習慣がつくことで、結果として、従業員が働きやすい職場環境にもつながっている。
一連の活動による組織づくりの結果、コロナ禍のなかにおいても、自分たちにできることを従業員が主体的に考え、オンラインによるコミュニケーションの工夫や、「バーチャル背景」の提供などの取り組みが進んでいる。

審査委員会・アワード事務局からの所感コメント

SDGsへの優れた取り組みで知られる大川印刷だが、環境重視経営への転換を本気で行い、継続している。従業員もSDGsについて主体的に取り組んでおり、全体のビジネスモデルとして素晴らしい。
印刷業という業態のなかで、世界的な課題となっているCO2排出ガス削減に向けて、率先して具体的に行動する姿は評価に値する。また、SDGsに関する考察と実行をボトムアップで取り組むことにより、プロジェクトに関わり、またリーダーとしての経験を積むことが、個々人の成長につながっている。
大川印刷のSDGsを軸とした経営活動は、環境経営を体現する人材が作りあげていることにも着目しなければならない。社会との関わりと情報発信については、活動がSDGsの最前線のものであることから説得性が高い。
社会性や社会的価値の実現を経営計画に組み込むことで、環境の変化に創造的に適応し、持続的な価値創出を実現している事例として、おおいに参考となる。

「KAIKA Award 2020 事例集」は下記からダウンロードいただけます。
https://kaikaproject.net/kaika-awards-download/

KAIKA Awardsの過去の受賞組織一覧は下記をご覧ください。
https://kaikaproject.net/awards/history

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