『KAIKA Awards 2020事例集』からのピックアップ④
株式会社PFU(KAIKA賞)

「KAIKA Awards 事例集」は、2014年から始まった表彰制度で受賞した組織の事例を取り上げています。2020年度は21組織の事例を掲載しています。今回は、その中から、KAIKA賞を受賞した株式会社PFUの事例をご紹介します。

イノベーション風土を醸成し、
新たな価値の創造にチャレンジし続ける“Rising-V活動”

創業時よりIT機器を開発してきたPFUは、2002年にオフコン/ミニコンに代わる新たな事業を生み出すため、“Rising-V活動”をスタートさせている。組織の枠組みにとらわれない社員の自由な発想で創出された企画に対して、会社が資金を出して新たな事業を創造すること、失敗を恐れずチャレンジする人材を育成することを目的にしている。
個人やグループの自由な発想・取り組みを組織的に支援・推進する活動として10数年にわたり継続し、製品開発や技術力向上へ寄与してきた。参加者も開発部門だけでなく関係会社を含む全社的活動へと拡大している。2019年からは活動結果を事業へと繋げる制度面の整備も進み、活動内容も他社や地域との共創による社会課題の解決に挑戦するものへと発展している。

受賞ポイント(KAIKAな視点・取り組み)

PFUは2002年に、親会社によるグループ事業の再編に伴い、事業の主要な柱を失うことになり、構造変革を余儀なくされた。そうした状況のなか、組織のしがらみや既存の考え方に固執することなく、新しい事業創造・製品開発・技術強化を進めるべく、“Rising-V活動”をスタート。提言した当時の常務からは、「ノルマがない活動である。誰にでもチャンスがある。強制や管理されることはない。生産革新だけではなく、企業のあらゆる活動が対象である。仲間のネットワークを利用する。アイデアを直ちに具現化する。活動によって知恵を鍛える。従来の組織にこだわらない。とにかく実践する活動が会社の活力を生む源である」という説明があったという。
個人の自由な発想を引き出し、自由な発想で好きなテーマに挑戦できるということから、おおいに関心が集まり、年間で50件の取り組みがあった。その後も年平均30件ほど継続している。日常業務ではできなかったことが、“Rising-V活動”で取り組まれたことで、実際の業務に活用された事例などが生まれている。
ただ、20年近く取り組みを継続するなかで、当初の熱量が低下。2019年に、てこ入れを図り、事業創造を進める会社の方向性と連動した取り組みとして、あらためて、熱量が高まってきている。

取り組みの背景と内容

新規事業創出や各種提案のために社内で行われる一般的なコンクールやアイデアソンなどは、詳細な企画書の制作やプレゼンテーションに力を入れることが目的化してしまう例も見られる。また、上司受けする内容を慮った結果、あまり尖ったものにはならず、結果として、新事業開発・製品開発が進まないことも多々ある。
PFUの取り組みでは、申請手続きがシンプルになっており、A4一枚での申請が可能である。申請から一週間以内に活動承認が得られるというように、スピード感をもって活動に着手できる仕組みとなっており、さらに、活動費として、最大500万円まで認められている。試作機を新たに作ることを想定した金額設定であるという。
2002年には50件(参加者250名)、2010年までの期間では、若干の上下はあるものの、毎年平均30件強の取り組みがあり、一定の成果が見られている。ところが、その後、2018年までの期間においては、平均20件程度と低下した。活動を始めた当初の思いを知らない従業員が増えたことなどが理由である。
そこで、2019年から、再活性化に向けて、てこ入れを開始。事務局体制の強化、座談会形式の説明会開催などにより、社内での認知度を高めているほか、講演会や外部で実施されるスタートアップ大会の聴講を勧めるなど、活動の再活性化に取り組んできた。

取り組みの成果や波及効果、推進ポイント

そうした取り組みの結果、2019年の活動件数は64件(参加者400名)にまで増加した。また、活動総数に占める新規への取り組みの割合が、2003年から2018年は18%であったのに対し、2019年は28%と向上。活動初期にあった、「まずやってみる意識」が再び見られるようになり、内外の変化に対する組織の機敏な対応と個人の成長に結びついている。
具体的な事業への貢献としても、事業部では実現できなかったアイデアが製品化された例や、国内だけではなく海外在住のAIに長けた人材が参画し、新サービスや製品の研究開発において、画像認識や音声認識・自然言語処理などに共同で取り組んでいる例も生まれている。そのほか、活動に関連する業務として、材料などの購買手続き・契約関連実務・予実管理といったプロジェクト管理手法を習得することができたという声も聞かれている。
さらに、地域との関わりや社会課題の解決に対応した“Rising-V活動”の展開として、地元小学校でのプログラミング教育開始に際しての教材開発・提供という活動も生まれている。従来の製品開発の過程のなかでは、プロダクトアウト的な思考になりがちであるが、具体的な利用者の思いに触れることで、ユーザー志向の発想を得ることが可能になり、本来業務での延長では得られない経験ができたことも活動の成果であると考えられる。外部との共創活動を通じた社会課題の解決につながる活動が、今後も増えてくることが期待される。
同社では、「PFU Way」として、①お客様に夢と感動を与える存在を目指す、②グローバルでトップとなる技術の創出を目指す、③共創活動を通じて社会課題の解決を目指すと宣言しているが、“Rising-V活動”を通じて、これらの実現に受けた社員の意識が着実に高まっていると言えるだろう。
また、一連の活動が、開発部門だけではなく、営業部門やコーポレート、グループ会社を含むグループ全体へと拡大するとともに、これらの活動結果を事業化へと後押しする制度面の整備も進んでおり、今後のさらなる発展がおおいに期待される。

審査委員会・アワード事務局からの所感コメント

グループで4000名を超える組織にイノベーション風土を醸成し、新たな価値創造をテーマとした全社的な活動として、20年近く継続的に粘り強く取り組んでいることは素晴らしい。直近の活性化策のてこ入れなどもあり、さらなる広がりが期待できる。
“Rising-V活動”の社内外におけるパフォーマンスは着実に成果を上げ、事業貢献する事例も見られており、新商品開発や地域連携への取り組み、 そして業務面でのスキルアップなど、具体的な成果に結びついている。
自発的な活動と提案内容自体が業務裁量の幅に気づきを与え、モチベーション向上や自信につながっていることがうかがえる。年齢を問わず、いろいろな階層で新たな企業文化醸成が見られることが頼もしい。
新しいことに挑戦する風土を取り戻し、自社の技術やノウハウを活かしながら、イノベーションを実現する事例として、他社の参考にもなるだろう。

「KAIKA Award 2020 事例集」は下記からダウンロードいただけます。
https://kaikaproject.net/kaika-awards-download/

KAIKA Awardsの過去の受賞組織一覧は下記をご覧ください。
https://kaikaproject.net/awards/history

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