チームでパフォーマンスを上げる職場づくり~
第3回:メンバーを知る

2020年4月6日

第3回:メンバーを知る

こんにちは。チームスキル研究所の田中信です。

「チームでパフォーマンスを上げる職場つくり」。第2回では職場でメンバーの人的側面仮説をインタビューで検証するワークをご紹介しました。
このインタビュー・ワークについて、前回と同様に職場で実践された管理職の皆さんの振り返りコメントを用いて、職場の現状について考えていきましょう。

仮説検証インタビューを実施してみて

  • 普段よくコミュニケーションをとっている部下に対して実践してみたが、仮説と全く合っていなかった。自分の物差しで他人を測ろうとしているためだろうか?

  • 自分としてはコミュニケーションがとれていると思ってましたが、話してみると知らないことが多くあり、業務上の会話しかしていないことが良く分かった。

  • 日頃、仕事の進め方などの話をしているつもりだったが、改めて聞いてみると一人ひとりがより深く、業務改善をしていきたいという気持ちで仕事をしていることがわかりました。

  • 自分が想像していた以上に、インタビューした職場仲間が今の仕事が大好きでお客様のために貢献したい気持ちが強いことに気づかされました。

  • 仮説と大きく離れていた項目について、その理由を聞くこと、またその人の普段の行動を注意深く観察することで理解できるものが多かった。

  • スタッフが自分のビジョンをこんなに考えていたんだと分かって、実現できるようにサポートしたいと思いました。

  • この検証をすることで、改めて本人の思いや考えを聞けて、どのようにサポートすべきか見つけやすくなった。

  • スタッフの話を聞くことで、スタッフの良いところ、頑張っているところに改めて気づき、感謝の気持ちが大きくなりました。

  • 話を聞いていると「良く聞いてくれた」「話をしたかった」という言葉や態度があったので、今までのコミュニケーション不足を反省させられた。また、なにを考えているか分かりにくい人も、話をきいてみると意外とよく話すことがわかった。

  • 転職を考えていると聞かされた際は驚いた。

など、職場メンバーの一人ひとりに対して、今まで自分が想像もしていなかった事柄について知る機会になったとコメントされる管理職の方が多く見られます。

普段、話をする機会が少ない部下に対して、このワークを実施することで相手についての発見があるのは理解できますが。実は、日頃からよく話をしている部下に対しても新しい発見をされる方が多く存在します。 この背景には、「自分は相手のことをわかっているはず」「彼女(彼)はこういう人だ」という思い込み(無意識の偏見・Unconscious Bias※1)が発生していると考えられます。このような思い込みは知らず知らずのうちに生まれてしまうものなので、前回ご紹介した仮説検証インタビューなどを定期的に実施することで、「自分の中で勝手な思い込みが生まれていないだろうか?」と問い直す機会をつくることが大切です。無意識の偏見・Unconscious Biasという言葉はダイバーシティ&インクルージョンの分野でよく取り上げられますが、女性活躍やシニア雇用、LGBTQ、障害者などのマイノリティと言われる方々への対応だけでなく、私達の普段の生活の中でも起きている現象です。究極的には私たち一人ひとりがマイノリティであり、その違いを企業経営として活かすことがダイバーシティ&インクルージョンの本質であり、この「思い込み」に対応できる力を養うことは今後の組織管理者にとっては不可欠な能力となります。

上述したインタビュー・ワーク実践者のコメントがある一方で、下記のような意見を持つ方もいらっしゃいます。

▲インタビューの結果は自分の仮説と大して差はなかった 。
▲メンバー各人のビジョンと自分(管理職)の示しているビジョンが異なり説明が足りていないと思った。

上記のコメントを出されるタイプの方は、他者と自分の意見の違いを認識することに意識が向きにくく、逆に「結局のところ言いたいことは●●ということだよね」と上位の概念でまとめてしまう傾向が強い可能性があります。この「こういうことだよね」とまとめてしまう話の終わらせ方は、昔の職場マネジメントではごく当たり前に使われていましたが、現在では部下から「話しが通じない管理職」と認識されてしまいます。その結果、何も言ってもらえなくなるリスクがあるので注意が必要です。
そして、リモート(またはテレ)ワーク時代においては、意思疎通の品質を高めることは、とても重要になってきます。何故なら、異なる認識のままお互いに個別に業務を進めてしまい、これまで以上の業務ロスを発生させる危険性が高まるためです。

「結局●●ということだよね」とまとめるのではなく「あなたの伝えたいことをきちんと理解できているか確認したい。ついては●●という理解でいい?」と自分の認識が部下の伝えたい意図に合っているのか?を確認することが大切です。
さらには「そう考える背景(理由)について、もう少し詳しく教えてもらえる?」と部下の意見や考えの背景・理由をきかせてもらうことで、相手との対話内容に対する、認識レベルや、気になっている事柄、大切にしている事などについて理解を深めることができ、指導方法や成長サポートの仕方に関する知見を増やすことができます。

一方で、この仮説検証インタビューを実施した際に上述の「▲印」のついたコメントを感想として持った管理職の方は、ぜひチームスキル研究所(info@teamskill.org)までご連絡ください。ご一緒に今後のスキルアップ策について検討できればと思います。

■メンバー同士がお互いを知る機会づくり

では第3回の本題に入りましょう。

第2回でご紹介したメンバーの人的側面仮説についてのインタビュー・ワークは管理職と職場メンバーの関係を再構築するためのツールでした。
職場のチーム力を高める際、その基盤として上司と職場メンバーの関係の質を高めることがとても大切ですが、加えて職場のメンバー同士の関係を再構築することも重要です。
チームスキル研究所では、チーム力を高めるツールやワークをご紹介していますが、代表例として価値観ワークの活用法について共有したいと思います。

価値観ワーク※3でメンバーの大切にしていることを知る

価値観ワークとは、職場メンバーの一人ひとりが、どんなことを大切に思っているか?をツールを使って知り合うワークです。

このワークを職場メンバーで実施することで、以下のことが得られます。

  • 普段、どんなことを大切にしながら行動や発言をしているかがわかる
  • どんな事柄に強く反応する(こだわる)のか、また反応が薄いのかがわかる。またその背景(理由)も聞き出すことができる
  • 大切にしている事柄について、その背景(理由)も含めて知ることで、会議や打合せなどの場面で、メンバー各自がこだわるポイントを把握できる。そのため今後の対話場面において、メンバーのこだわり発言に対して「●●さんは、スピード(例)が大切と言ってたね」とお互いに寛容になれる(知らないと「なんでスピードにこだわるの?、それより品質でしょ!」といった価値観のぶつかり合いになったりする)
  • 相手の大切にしていることを知ることで、効果的なフィードバック/フィードフォワードを提供できるようになる(相手に響く言葉で伝えることができる)
  • 自分の大切にしていることを共有しているメンバーに対しては安心感が生まれ易く、普段より発言する際の心理的抵抗感が減る

そして、メンバー各自がお互いの大切にしていることを尊重し合うことで、責任感の高まり(メンバーに迷惑をかけないように納期を守ろう等)にもつながります。


価値観ワーク※2の進め方

ここからは価値観ワークの具体的な進め方を説明します。
まずメンバーに下記に示すワークシートを配布します。

このワークで使用するシート(PDF版)はこちらでダウンロード可能です。
https://note.com/teamskill/n/nc4537d11fe37

① 個人ワーク

メンバー各自で、「価値観ワークシート(1)」を用いて「自分の大切にしていること」を明らかにします。
(所要時間: 5分程度)
ワークシートには36個の言葉が並んでいます。
(右最下段 36番はブランク)

(1) 自分が大切にしていることを表す言葉を5つ選び○印をつけます。
(2) もし該当する言葉がなければ36番の欄に自分の大切にしていること(言葉やポンチ絵など、複数可)を記述します。
(3) 大切にしていることを5つ選択したら、次にその5つの中で最も重要なものから順位づけ(1から5まで番号づけ)します。
(4) 最後に、自分が大切でないと思うものに×印をつけます(いくつでも可)。

②ペアワーク

次に2人ペアの対話ワークを行います。
二人組みになり、価値観ワークシート(2)を用いて、大切にしている5つについて、その理由や背景をお互いに聞き取ります。
(所要時間: 10分程度)

(1) 二人でペアになり、一人が「話し手」役、もう一人が「聞き手」役になります。
(2) 話し手は自分の大切にしている価値観について、一番大切なものから順に「大切にしている背景や理由」について話をします。
(3) 聞き手は話し手の大切にしていること、及びその背景・理由を、価値観ワークシート(2)を用いて記録します。
(4) 大切にしていることについての聞き取りを終えたら、役割を交代して、同様に上記の1)〜3)を行います。

③ メンバー全員で対話ワーク

チームメンバー全員で、「価値観ワークシート(1)と(2)」を用いて、お互いの大切にしていることを共有します。
お一人3分程度を目処に実施します。

④ ワークの振り返りを行う

チームメンバー全員で、価値観ワークを振り返り(所要時間: 5分程度)、メンバー各自の大切にしていることを共有した感想を出し合います。

(1) 個人ワークで、「ワークに参加して気づいたこと」、「今後の仕事に活かしたいこと」をポストイットに書き出します。
(2) メンバー全員でポストイットに書き出した内容を発表し合い共有します。

価値観ワーク実施後の活用法

職場メンバーで価値観ワークを実施した後には、打合せや会議の場面でお互いの大切にしていることが何だったか、が話題に上がるようになるでしょう。このような機会を通じてメンバー同士が、お互いの大切にしていることを知り合うことの意義について復習することで、「違いを知り、活用する」習慣が形成されていきます。

価値観ワークには、上述のワークシートを使用するやり方の他にカードを用いたツール※3も提供されています。
職場メンバーでいろんなツールを試しながら対話機会をつくりましょう。

その他のツール

今回ご紹介した価値観ワーク以外にも、「お互いを知るツール」がたくさんあります。
チームづくりの過程における障害の1つがマンネリ化です。このマンネリ化を防ぎ、また思い込み(無意識の偏見)に陥らないために「お互いを知るツール」が活用できます。管理職にはメンバー同士が、お互いの違いを知り、活かす機会を繰り返しつくることが求められます。

以下にメンバーがお互いを知るためのツールとしてチームスキル研究所がお勧めしているもの(一部)をご紹介※4しておきます。

  1. 効き脳診断(メンバーがお互いの思考スタイルを知り、コミュニケーション・ギャップを減少させるために活用できる。WEB診断。診断時間は10分程度)
  2. (旧)ストレングス・ファインダー((現)クリフトンストレングス・テスト)(メンバーの強みを知り合うツールとして活用たできる。WEB診断。)
  3. DiSC
    (行動分析アセスメントツールとして活用されている。個人の傾向や1対1の関係についての知見が得られる。WEB診断)
  4. V−CAT
    (個人特性を、人それぞれに備わった固有の「持ち味」と、持ち味の行動への現れ方についての知見が得られる。テスト用紙を使用)
  5. T−KI(トーマス・キルマン コンフリクト・モード検査)
    (対人関係における対立時の対応方法についての知見を共有できるツール。検査シート利用)


次回(第4回)はリモートワーク時代の職場マネジメントでも活用できる、「チーム状態」に関する対話手法についてご紹介します。お楽しみに!

※1: Unconscious Bias(無意識の偏見)については、Google社のre:Workサイトで紹介されています。
https://rework.withgoogle.com/jp/guides/unbiasing-raise-awareness/steps/introduction/

※2: 『価値観ワーク』活用法及びワークシートPDF版のダウンロードサイト
https://note.com/teamskill/n/nc4537d11fe37

※3: 価値観ワークで使用できるツール
1) エンゲージメント・パルスサーベイwevoxを提供するAtrae社が開発した「バリューカード」
https://wevox.io/valuescard
2) 株式会社トリプルバリュー社がマクアケでプロジェクトとして投稿している「エンゲージメント・カード」 
https://www.makuake.com/project/engagement_card/

※4 メンバーがお互いを知るツールの紹介サイト
1) 効き脳診断 :フォルティナ株式会社(ベネッセ様活用事例)
http://www.fortina.co.jp/example/benesse.html
2) クリフトンストレングス・テスト(旧ストレングス・ファインダー):GALLUP社
https://www.gallup.com/cliftonstrengths/ja/home.aspx
3) DiSC:HRD株式会社
https://www.hrd-inc.co.jp/disc_product.html
4) V−CAT:株式会社日本能率協会マネジメントセンター
https://www.jmam.co.jp/hrm/course/assess/item_v-cat.html
5)TKI(トーマス・キルマン コンフリクト・モード検査):JPP株式会社
https://www.jppjapan.com/tki/

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★第1回のコラムはこちら
https://kaikaproject.net/column/teamskill01/
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一般社団法人チームスキル研究所 代表理事 コ・ファウンダー
田中 信(KAIKA Award検討委員)


大学卒業後、芝浦工業大学大学院 工学修士課程修了。日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて20年以上にわたりコンサルタントとして企業・組織の改革・改善活動の支援に関わる。対象は、研究開発、商品開発、新規事業開発など企業・組織内での「新しい動き」をつくる活動を中心とする。  人と組織の力を最大限に引き出す支援として、キヤリアビジョン開発、コーチング、ファシリテーション、リーダーシップ、社内コンサルタント育成などのヒト系ソリューション事業を開発してきた。  2009年独立。現在までエグゼクティブ・コーチング、職場開発(チームスキル)、社内改革推進者養成や内製化など改革支援を推進。2012年一般社団法人チームスキル研究所を設立。その後、日本経営支援センター執行役、wevox組織・人財アドバイザーを兼務、現在に至る。

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