チームでパフォーマンスを上げる職場づくり~
第4回:チームを知る

2020年5月13日

第4回:チームを知る

こんにちは。チームスキル研究所の田中信です。

第3回(メンバーの人的魅力を仮説検証で再発見する)では職場のメンバー同士がお互いを知る機会づくりの代表例として、「価値観ワーク」の活用についてご紹介しました。
この価値観ワークを職場で実践された管理職の皆さんの振り返りコメントを用いて、職場の現状について振り返っておきましょう。

価値観ワークを実施してみて

  • 35ある項目から選択されるものは各メンバーにより様々で、改めて個人の価値観の違いについて触れる機会となった。

  • 大切だと考えている項目が担当者毎に異なること、それぞれの項目を選定した背景が存在していること、それにより仕事でこだわるポイントや優先順位が決まっていくこと、を認識しました。

  • 人それぞれ価値観は違うがマイナスな意見ではなく、プラスの発想で理由を発表してくれた。その人らしい答えもあったが、新しい発見もあって、純粋にとても意義ある時間でした。

  • 自分(管理職)とメンバーの価値観が異なっている部分が多いことがわかったので、メンバーに響くアドバイスができるように注意しなければならない。

  • 自分が重視していることをメンバーに押しつけることは反発することになるので相手に合わせて説明するように取り組みたい。

  • 一緒にいる期間が長い担当者間でもお互いに新たな気づきがあり、チーム感を強めることにつながったと感じました。

  • 各メンバーが選択する5つの項目については、それぞれ親和性が認められ、根底にはすべてのベースとなる価値観が横たわっているように感じられた。

  • ×をつける場面において、10年以上の業務経験をもつメンバーは若手に比べて×を多くつける傾向がみられた。各自のこれまでの経験の中から、自分自身の大切にしているものと特に大切でないと割り切るものを判断する力が養われている様子が垣間見られた。

  • メンバーのうち7割以上が「感謝」をあげた。お客様に対する感謝、仲間に対する感謝を持っているメンバーと働けることを、とても誇りに思う

仕事外だが仕事に役立つ対話テーマでメンバーが意見表明できる環境を育む

 このワークはシンプルですが、とてもパワフルです。それは、若手・新人が「自分がなにを大切にしているか、について意見表明をできること」です。普段はベテランやマネジャーの前で、なかなか発言できない若手・新人も、このワークでは「自分」について語り出します。それをみて他のベテランや先輩メンバーが「こんなに発言する人だったんだ」と驚かされる場面を何度となく見てきました。ここにこれからの職場マネジメントを有効に機能させるヒントが隠されています。
 一般の職場では「若手・新人は発言しない」とされていますが、それは単に発言できる環境が与えられていないためであることを職場メンバー全員で改めて認識することが大切です。日常の対話では仕事の話が中心になります。この「仕事の話」をする限りにおいては、先輩、ベテランの方が知識・経験を多くもっているため優位な発言ができます。若手・新人は知識・経験では諸先輩には及びませんし、たとえアイデアを出しても、論破される確率は極めて高い状況でしょう。
 一方で、今回ご紹介した「価値観ワーク」のように、自分について語ることであれば、他者からは業務内容のように良し悪しを評価される内容では無いこと、また選択した価値観キーワードについても、「なぜそのキーワードを選択したのか?」という背景や理由について一人ひとりが語れる内容であるため、その背景説明を聴いているベテランや先輩も「なるほど、そういう考えをもっていたのか」「だから●●のときに◆◆するんだな」と納得がいく対話が成立します。
 そして発言した若手・新人の方も、周囲のベテランや先輩、さらには管理職に対して「自分の発言をきちんときいてもらえた」という実感をもてる機会となります。この体験は、職場で重要と言われる「心理的安全性」を具体的に高める手段となります。
 このようにメンバー間でお互いの意見をきくことに「価値がある」という認識ができれば、業務上のコミュニケーション場面でも「相手の意見をきいてみよう」というメンバーのきく姿勢を育むことができるのです。

違いを活用した職場運営基盤づくりが可能に

 このワークには、もう1つ重要な要素があります。それは「みんな違うんだね」という「違い」の存在を認識できることです。
 一般によいコミュニケーションをするために、お互いの間に共通点を見出すことに意識を向けることが多いのではないでしょうか。共通点探しは、初対面の関係構築においては親近感を生み出すので、その後の対話意欲を生み出す効果があります。しかし建前的なやりとりから一歩進んで、より本質的な対話や創造的対立によるコラボレーションを引き出すためには足かせになる危険性があります。
 そこで、価値観ワークのように各自の違いを明確に表明できるツールを用いて、「我々はみな違う」「同じモノを見ていても、メンバーそれぞれが異なる見方、考え方、意見をもっている」「同じ体験をしていても異なる感じ方や学びをしている可能性がある」「違うメンバーが一緒に仕事をしているのだから、そんなに簡単にうまくいく訳がない」といった「違うね」という感覚をメンバーが共通に認識した職場運営状態をつくり出すことが大切です。
 この「わたしとあなた(の意見やモノの見方・考え方等)は違うね」「そうだね、違うよね」という共通認識ができると、「じゃあ違う(見方・考え方等をする)私たちはどうやって一緒にやってこうか?」という「違うね」を基本とした職場運営基盤づくりが可能になるのです。
 さらにはメンバー同士で違いを共通認識することで、メンバー同士で勝手に動き出してくれるという管理職にとっては嬉しいおまけもついてきます。この「違うね」を基本とした職場運営基盤づくりがこれからの職場を仕切れる管理職として重要なスキルであり、近年のオンライン型の職場をリードする際の必須要素です。

チームについて知る機会づくり

メンバー同士がお互いの違いを知る機会づくり、メンバー間の違いを活用した職場運営基盤づくりに加えて、次に大切なのが、チームについて知る機会づくりです。

 私が実際に職場を訪問して職場(チーム)ワークショップを実施する際、「チームとは?」について、職場メンバーの一人ひとりにお尋ねしています。すると、価値観ワークと同様、メンバー一人ひとりが異なる見解を披露してくれます。各メンバーがこれまでどのようなチーム体験をしてきたか、またはしていないかによって、チームという言葉のもつ意味合いは異なります。結果として人の数だけ「チーム」についていろいろな見方があることに気づく事ができます。
 この他にも多くの「チームに関する問い掛け」をしていきます。すると、メンバーそれぞれが観ている「私たちの職場(チーム)とは何か?」という職場(チーム)の姿がだんだん明らかになってくるのです。
 大切なことは、「一人ひとりが職場(チーム)をどうみているか?」、「なぜそう見ているのか?」 についてメンバー間で共有し、各自の見解の違いを認識しつつ、「このように違いをもつ私たちが、職場(チーム)をどのように運営していくのがよいのか?」についてメンバー同士で対話しながら考える機会をつくることです。
 このようなメンバー間の対話を促す段階で管理職が留意すべき関わり方は、「どうしたらよいか」と戸惑いをみせるメンバー達に対して、「こうしたらいいのでは?」と解を与えたり、また「こういう点はどう?」などの論点を提供するなど内容に関わる発言をするのではなく、「職場(チーム)をどのようにしてレベルアップしていくか?」についてメンバー同士で自然発生的な対話が生まれるようなコーチング的ともいえる関わりが大切になります。
では具体的な進め方を見ていきましょう。

チームスキル・メンバーチェックリストを用いたスケーリング型対話を活用する

 ここでは代表的な対話ツールとして、「チームスキル・メンバーチェックリスト」をご紹介します。
 このチェックリストはチームの状態についてメンバーが意見を述べやすいように設計されています。このワークシートを用いて職場メンバーで対話の場をもつことで、メンバー各自が、「チームをどのように見ているか?」について具体的に把握することができます。
 各メンバーのチームに対する認識を把握した上で、チーム運営のレベルアップ策を考えることができます。さらには、各メンバーが、個人レベルでチームのレベルアップ・アクションを起こしたり、職場メンバー同士で共通の問題意識をもっていることに気づいた仲間同士が協力してアクションを起こしたり、というように職場が自発的に職場のレベルアップのためのアクションを誘発させるきっかけもなります。

チームスキル・メンバーチェックリスト対話ワーク進め方

ここからはチームスキル・メンバーチェックリストを用いた対話ワークの具体的な進め方を説明します。
まずメンバーに下記に示すワークシートを配布します。

このワークで使用するシート(PDF版)はこちらでダウンロード可能です。
https://kaikaproject.net/wp-content/uploads/2020/05/チームスキルチェックリスト.pdf

<対話ワークの手順>

① 対話ワークの目的をメンバー共有する
なぜこの対話ワークを実施するのか、についてメンバーと共有します。例を参考に自職場に合った目的を設定します。
目的例: 「対話を通じてメンバーが現状のチーム状態をどう観ているかを共有し、よりよいチームになるためのアイデアを発見し、みんなでチャレンジするため」 

②検討する質問を決める(1分程度)
チームスキル・チェックリストの11項目の中から、意見交換をする質問を選びます。
質問はA、B、Cの順に、また表番号の順に、チームとして成熟した能力が求められる内容となっていますので、初めは若い番号(№1、2、3辺り)から始めることをお勧めします。

③個人ワーク
メンバー各自で、「チームスキル・チェックリスト」を用いて「チームに関する質問について」3つの視点で自分の考えを書き出します。

(1)「その質問で訊ねられていることが十分にできている状態を10点満点だとすると、現状は何点か?」
 注意点: 言葉の定義について管理職やファシリテーター役が明確にすることは避ける。各々のメンバーが思う観点と基準で自由に評価・意見だししてもらうことが重要です。もし言葉の定義が必要な場合は、④(対話ワーク)によってメンバー発言から得られる様々な観点を用いて話し合ってみることをお勧めします。

(2)「(1)で回答した点数について、できていると思っていることはどんなこと  か?」を書き出してみます。
まずはキーワードでもよいので思いつくことを書き出してみます。後述する④(対話ワーク)の際に他のメンバーへ説明をしながら、キーワードの中にある具体的な内容を明らかにしていくことが可能となります。

(3) 「 (1)で回答した点数を、10点満点にするためには、あと何が実現できればよいか?」について書き出してみます。
(2)と同様にキーワードでも結構です(もし時間があれば、詳細について記述してもよい。)。

(4)設問11の「その他」は、他のメンバーに質問してみたいことを自由に書き出し、時間のあるときや次回の対話ワーク時の題材として活用します。

④メンバー全員で対話ワーク
チームメンバー全員で、「チームスキル・メンバーチェックリスト」に記述した各メンバーのコメントについて一人ひとりから発表してもらい、共有します。お一人2〜3分/設問 程度を目処に発言してもらいます。

⑤対話チームの振り返りを行う
チームメンバー全員で、この対話ワークを実施して気づいたこと、感じたことを振り返り、今後の進め方について意見交換をします。
この振り返りの際に、レベルアップ課題で出てきたメンバーからの意見を管理職が持ち帰り検討にするのではなく、可能なものはメンバー同士でアクションを具体化してもらい、次回の対話ワークまでに何らかの行動をトライしてもらうことを推奨します。
そして次の対話ワーク実施時には、各自がトライした事柄を振り返り、「できたこと」、「うまくいかなかったこと」、「実践してみて学んだこと」、「今後やってみたいこと」などを話し合います。
このような対話と実践を繰り返しながら自分達で職場(チーム)をよりよくできる実感(やればできる感)を育てていきます。

  
「仕事について語り合える」職場へ進化させる

 第3回のコラムで共有した「メンバーを知る」、今回ご紹介した「チームを知る」などの過程を経て、職場メンバーが、各自の経験年数や仕事の知識量の違いだけで議論するのではなく、各メンバーが異なる見解をもつことを認め、対話のテーブルに自分と他者の意見を乗せられるようになっていきます。
 一般の職場では、上述の過程を経ずに、いきなり「思っていることを自由に言え」と言われてしまいます。その為、ベテランと若手・新人が語り合えるようにはなりません。
 「メンバーの違い」や「チームについて」の対話ワークを使って若手・新人の発言力を高めることができれば、職場やビジネスを新しい時代において価値あるものにトランスフォームできるきっかけを得られる可能性は高まります。
 仕事のやり方についてもZ世代のデジタルネイティブ的なものを新人のリードで取り込むことも可能になってきます。
 その為にも、メンバーがお互いの違いを認識しつつ自分の意見を発言できるような環境を、焦らず丁寧に整備していくことが大切です。

テレ(リモート)ワーク環境でも「質問」を用いた対話機会をつくることが重要

 チームスキル・メンバーチェックリストを用いて、メンバー各自が職場(チーム)をどう見ているか、の「違い」について共有することができますが、それ以外にも色々な観点を用いた対話ワークを設計することが可能です。例えば「どんな指導・育成方法がよいか?」や「職場や仕事仲間の間でプライベートの話をどの程度開示してもよいか?」、「今の業務範囲を越えた将来キヤリアの話について、上司と話をすることは可能か?」、など様々な対話テーマを設定できます。
 このような対話ワークはオンライン型の職場環境において、リアルな職場以上に重要な意味をもつようになります。それは、各自が離れた場所で仕事をするために、「どのようにチームとして機能するか?」、「どんな仕事の仕方をするのか?」についてお互いの認識合わせを丁寧にしていかないと、相手の考え方や、動き方がリアルに集う職場環境に比べ見え難くなるためです。
 第1回のコラムでご紹介した、「ビジネス成果の創出」と「人・組織の持続的開発」の両側面(RSマトリクス)を用いた職場ワークショップをオンライン型でも実施する職場が増えています。このオンライン型ワークは会議室に集まって実施するより、お互いの顔を見ることができ、かつ話の内容もしっかりと聞ける(録画もできる)など対面とは違うメリットも多く好評です。このように職場でもオンラインシステムの環境を有効に活用したワークショップを活用することをお勧めします。

オンライン型の職場ワークショップについてご関心のある方はKAIKAプロジェクト (https://kaikaproject.net/contact/)までご連絡ください。オンライン型ワークショップ企画方法やツール活用法などについてご紹介いたします。

次回(第5回)は、職場チームを効果的に運営する為の「サーベイツール」の活用法について共有します。

※チームスキル・メンバーチェックリストの活用法及びワークシートPDF版のダウンロードサイト(note.com)

https://note.com/teamskill/n/nef7bbafb642a

【バックナンバー】

★第1回のコラムはこちら
https://kaikaproject.net/column/teamskill01/
★第2回のコラムはこちら
https://kaikaproject.net/column/teamskill02/
第3回のコラムはこちら
https://kaikaproject.net/column/teamskill03/

一般社団法人チームスキル研究所 代表理事 コ・ファウンダー
田中 信(KAIKA Award検討委員)


大学卒業後、芝浦工業大学大学院 工学修士課程修了。日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて20年以上にわたりコンサルタントとして企業・組織の改革・改善活動の支援に関わる。対象は、研究開発、商品開発、新規事業開発など企業・組織内での「新しい動き」をつくる活動を中心とする。  人と組織の力を最大限に引き出す支援として、キヤリアビジョン開発、コーチング、ファシリテーション、リーダーシップ、社内コンサルタント育成などのヒト系ソリューション事業を開発してきた。  2009年独立。現在までエグゼクティブ・コーチング、職場開発(チームスキル)、社内改革推進者養成や内製化など改革支援を推進。2012年一般社団法人チームスキル研究所を設立。その後、日本経営支援センター執行役、wevox組織・人財アドバイザーを兼務、現在に至る。

この執筆者へのお問い合わせは以下問い合わせフォームよりご連絡ください。
https://kaikaproject.net/contact/

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