Vol.4 学び直し ~コラム:「グローバル」にアンテナを~速水さんに聞きました

Vol.04 学び直し

明けましておめでとうございます。
新しい年を迎えて、「こんな1年にしたい」「今年こそ○○を始めよう」と決意を新たにされた方も多いのではないでしょうか。

私も毎年、仕事上のチャレンジから習い事やダイエットといったプライベートまであれこれ目標を立てて、手帳に書き込んだりしています。残念ながら、大半は日々の忙しさに紛れて、先送りにしたまま翌年に持ち越されるのですが、それでも実現できたものも多少はあります。その中でこの数年でよかったと思うものを、今回はシェアさせていただきます。それは「オンライン・プチ留学」です。

MOOCという言葉をご存知でしょうか。MOOC(ムーク)はMassive Open Online Course(大規模公開オンライン講座)の略で、世界各国の大学や大学院の授業をインターネット上で受講できる仕組みです。大半のコースが無料なので、ネット環境さえあれば、経済事情や学歴、住んでいる場所、年齢に関係なく、誰でも一流の高等教育に触れられます。

代表的なのは、ハーバード大学とMITが立ち上げたedX(エドエックス)や、テクノロジー系の講座が充実しているUdacity(ユーダシティー)など。2012年頃からアメリカを中心に本格化したこの試みは、今や世界の800以上の大学が参加、8100万人が登録する新たな学びのプラットフォームに成長し、「教育の民主化革命」とも呼ばれています(1講座ごとで受講でき、修了証や受講証明書が発行されますが(一部有料)、原則として修士号などの学位取得につながる単位とは別物です)。

私の場合、1年半ほど前に大学で講義を担当するにあたり、OJTで身に付けた記事作成のスキルが学問的にどう体系化されているのか知っておく必要性を感じて、MOOCに興味を持ちました。調べた結果、受講したのはスタンフォード大学の教授陣が立ち上げたCoursera(コーセラ)というMOOCが提供する2つのクラスです。

Courseraでは講座は8週間単位で提供されており、生徒は週単位で講義の映像を見たり、画面上のテキストを読んで理解を深めます。その上で小テストを受けたり、課題のレポートを提出したり、「クラスメート」と意見交換をしたり。最終週には期末試験のようなテストと提出物があり、平常点と合わせて一定の基準をクリアすれば修了となります。

数十年ぶりの「学生」生活を経験してみて有難かったのは、仕事の合間や週末などの隙間時間に自由に学べることです。また、ありとあらゆる学問分野や業界について、初心者向けからプロフェッショナル向けまで様々なレベルの講座が用意されており、今の自分に必要な内容をピンポイントで学べることも驚きでした(しかも無料!)。

予想以上に面白かったのは、提出したレポートや映像課題について、生徒同士でピアレビューをすること。他の受講生の提出課題の優れている点、足りない点をコメントし、3段階程度の評価を付けます。リアルな大学と違って受講生が多いため、全員の提出物に教授陣が目を通す余裕がないという事情もあるのでしょうが、自分が悩みながら仕上げた課題に他の受講生がどう取り組んだかを知ることができ、とてもいい勉強になります。

一緒に受講している世界各国のクラスメートとの交流も刺激的な経験でした。私がピアレビューを担当した相手も、地元の新聞社から英語メディア転職したいというアルゼンチンのベテラン女性記者や、やたらと早口な英語でまくしたてるベトナムの若者など世界中から集まっており、ほんの一瞬とはいえ、互いの人生が交錯する不思議な感覚を楽しみました。

ここまで読んで、「英語で授業を受けるなんてハードルが高すぎる…」と思う方もいるかもしれません。確かに、多くのMOOCでは英語が共通語のため、一定の英語力は必要です。ただネット講義は対面の一斉授業とは違い、理解できなかった部分を聞き直したり、辞書を引く時間を取りやすいというメリットがあります。また、少なくとも私が受けた講座では、講師が話す内容が字幕のように表示され、まとめて印刷することでも出来ましたので、英語力のブラッシュアップという意味でも役立つと思います。加えて、日本語で受講できるMOOCも徐々に増えており、Fisdom、gacco、OLJといったプラットフォームが主流のようです。

MOOCは学位取得を目指す本格的な留学とは違うので、キャリアステージを一変させるほどのインパクトはないかもしれませんが、自分のキャリアや人生設計を見つめ直し、次に何が必要かを考える1つのきっかけにはなり得ると感じました。「人生100年時代」を迎えた今、学び続けることこそ変化に対応する秘訣だと言われます。新しい年を迎えて心機一転、まずは自分に向いた講座がありそうか、気になるキーワードを入れて検索してみてはどうでしょうか。

速水怜子氏

国際ニュース編集者、大学兼任講師
英文ニュース記事の翻訳・編集に加えて、ジャンルを越え記事企画、取材、編集を行う
また、大学では 国際情勢の基礎知識、ジャーナリスティックな文体・構成で
書く力を鍛えるユニークな講義で学生からの人気を得る

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