Vol.1 はじめに:個と組織の新たな関係へ ~コラム:働き方シフトで見えたこと~ 大橋さんに聞きました

Vol.01 はじめに:個と組織の新たな関係へ

世の中「働き方改革」という言葉で騒がしいですね。日本全体が何かと働き方改革に関心を寄せているような気になってしまいます。
そもそも「働き方改革」って一体何なの?という漠とした疑問でweb上を調べ歩くと、働き方に関する関連法案の話に行き着くことが多いです。確かにマクロ視点から、この国の中長期的な労働力不足は見えていますし、正規・非正規社員の格差の問題や、長時間労働の問題もあるでしょう。それらについて企業側が働く環境を整えたり、選択肢を多く提供することは、基本的には良い方向だと思います。ただ、世の中のニュースや話題は、企業側を主語にしたものがほとんどで、実際の働き手、個々人を主語にした「働き方改革」が少ないような気がします。

ということで、個人主語にした「働き方」について考えてみようという本コラムが生まれました。いきなり変な始まり方で恐縮ですが、私自身、最近いわゆる“働き方”をシフトしてみました。具体的には、2014年に敢えて正社員を辞して非正規社員になりました。その後、2016年に非正規の社員も辞め、現在は個人事業主という形態で働いています。もちろんその期間には色々と迷いや葛藤など想うところもありました。結果としては「まぁ、なんとかなるものだ」という感想なのですが、この期間、何がどう変わったのか、その過程で私の周囲や私自身の中で起こった様々な出来事や感想について、あれこれと考察してみようと思います。

先にお断りしておくと、決して私は特別な人材というわけではありません。元々独立したいという強い野望があったわけでもなく、むしろひとつの会社組織でずっと仕事人生を全うしていくのだと思っていました。自身、リベラルだという確信があるわけではありませんが、特別な思想や拠り所となる信念を固く持っているわけでもありません。プロフィールにあるように、極めて特別な仕事・業種でもなく、いわゆる一般的なアベレージ・ビジネスパーソンです。そんなビジネスパーソンが、組織に属さない働き方をすることになりました。これが世にいう働き方改革ではないと思います。ただ、これ「が」働き方改革ではないと思いますが、これ「も」働き方改革のひとつなのかもしれません。

世の中「非正規社員が4割に達した。これは大問題だ!」と騒いでいるように見えます。世帯年収は94年頃のピーク時から随分減り、今や400万円程度になった。少子高齢化が進み、年金以外の収入が無い世帯がどんどん増えています。そんな中において、労働力人口に該当する世代に、非正規社員が増えるのは大きな問題である・・・といった話です。
言いたいことはわかります。正社員=長期的な雇用の安定=精神的、経済的な安定=将来不安の軽減=人生設計の立てやすさ=消費、支出の拡大、といった構図なのでしょう。単純に、所得が増えないと消費が刺激されないのだから経済成長に良いこととはいえないでしょう。ただ、ここはあくまでも個人主語のコラムなので、この際乱暴ですが会社主語のことは放っておいて話を進めます。

私が一連の処遇の経験を経て改めて思うのですが、非正規社員より正規社員の方が、上、エライ、高待遇、安定・・・という考えは一回リセットしてみた方が健全なのかもしれません。
もちろん色々な側面から考察したうえで「非正規社員<正社員」と思う人がいてもいっこうに構わないと思います。

また、非正規社員を選択した人の中には、家庭の事情でそうならざるを得ない人もいれば、正規社員へのステップとして、非正規社員を選んでいる人もいます。ただ、ある「人」への処遇と、その「人」の優秀さや組織への貢献度という関係はあまり(というか全く)無いというのが私の所感です。もちろん処遇という意味でも、その選択肢は多い方が良いですし、人生設計、キャリア設計によって敢えて非正規社員という処遇を活用する人もたくさんいるはずです。私はそれらに加えて、積極的に非正規社員や非組織社員(・・・というのでしょうか、要は100%組織に属するものではない働き方です)を選ぶ道を推薦したいと思っています。

私が非正規社員を選ぶきっかけとなったのは、その当時の仕事柄、様々な働き方をされている方を、取材・インタビューをする機会に恵まれたことです。数々の人にインタビューしていくうちに私の「あたり前」感覚が変わってきたのです。そして次第に、当時属している会社組織に自身の身も心も、全体重を預けることへの不安がふつふつと沸いてきました。不安というのは属している組織の継続や倒産への不安というわけではなく、自分のキャリア上、何か決定的に「損」をしているのではないか?という漠とした不安です。

つまり大げさに言うと、リスクを取ってチャレンジングに非正規社員や、個人事業主という立場を選択したというよりも、むしろその逆で、組織に居続けることへの不安やリスクを回避するために今の立場へとシフトしたということです。
今後はそういう感覚をもった「個人」が増えていくのではないでしょうか。増え方はゆっくりなのか、あるいは一気になのかは分かりません。ただ、少なくとも増えることはあっても減ることはないでしょう。個人と組織の関係は、属するという感覚から明らかに変わってきているのです。

大橋新氏

大学卒業後に金融機関・教育会社、シンクタンクを経てフリーに。
ド文系で特別な技能や専門分野を持たず、かといって特別に優秀でもないアベレージ人材。
そんな大橋新が経験した働き方のシフトについて「働き方改革」をどのように捉え、
どのように実践しているか言い散らかすコラム。

ページトップへ戻る