Vol.3 新しい「あたりまえ」へのシフト ~失ったもの、生まれたもの~ ~コラム:働き方シフトで見えたこと~ 大橋さんに聞きました

Vol.03 新しい「あたりまえ」へのシフト ~失ったもの、生まれたもの~

先日、ふとしたキッカケで家の中を整理していたところ、ポロポロと昔の写真が出てきました。今やスマホで撮ってそのままデジタルで保存ということがほとんどなので、プリントアウトされた写真を手元に残す機会は随分減ってきましたね。
ひょっこりと書籍の間から出てきたその写真は2005年頃のもので、私がオフィスで仕事をしている様子が撮られていました。前職に入社して3~4年くらいです、たぶん。おそらく皆さんも一昔前のそんな写真が出てくると、「自分、若っ」「パソコン、でかっ」などと感じられると思います。
私が最初にその写真を見て驚いたのは書類の多さでした。島型になった机のひとつに自分の机があてがわれていて、それぞれの机上に固定電話があり、書類やファイルが文字通り山になって積まれています(地震があったら確実に崩れたと思います)。

各々の机にキャビネットがあり(おそらくその引き出しの中にも大量の書類と名刺があったと記憶します)、島の中央には回転するタイプの本棚があって、チームメンバー共通のファイルでギッシリ埋まっていました。
昔ってこんなに書類が多かったんだぁと改めて。考えてみると今や「あたりまえ」になってしまったものは、たくさんあると思います。
携帯電話やパソコンなどの分かりやすいツールの出現もそうですが、仕事用・オフィス向けに提供されているIT系のサービスや会社のルールや制度なども、新しい「あたりまえ」を促進していると思います。働く個々人の組織に対する考え方も、本コラムのテーマでもある「働き方」にまつわる事象についても、徐々に新しい「あたりまえ」へシフトしているハズです。

ということで、私の立場から…つまり、ひとつの組織に全体重を載せた働き方から、今の働き方へシフトしてみたところ気づいた、新しい「あたりまえ」をまとめてみると、ざっくり以下のような感じです。

◆失ったもの
・曜日感覚
・ボーナスと定年
・社内政治

◆生まれたもの(変化したもの)
・アイデンティティ
・社会感度
・出没エリアと拠点感覚

この先、さらに失うものや生まれてくるものもあると思うので、あくまでも今のところ…ですが「失ったもの」を書き出すと、色々なものの境目が曖昧になってきているのだと気づきました。端的に言えば仕事とプライベートの境目が曖昧になってきました。スマホやPCなどのツールは仕事ともプライベートともどちらとも言えない領域で使っていますし、服装もどちらでもOKのような服装が増えてきました。
白でもない黒でもないカフェラテが好きなのは無関係ですが(笑
そんな中、曜日感覚が薄れてきました。土日でもじっくり考える仕事や作業に勤しむことは頻繁にありますし、逆に平日でもアポイントがなければ、休日のように過ごすこともよくあります。
仕事をする場所も曖昧というかプライベートに溶け込んでいる感覚です。カフェであったり、クライアントの保有する空きスペースであったり、自宅の書斎であったり、といったところです。また「今年の冬のボーナスは・・・」「定年後の年金は・・・」というニュースが流れると、あ、そういえば…と思うのですが、組織に属していないと当然、ボーナスや定年という感覚も次第に薄れてきます。

もうひとつ失ったものは、社内政治です。顧客ではなく上役を見て忖度しなければならなかったり、他部署の責任者のメンツを考えて調整を図ったり、という仕事です。組織である以上、マネジメントに関わる任にあれば多少なりともそういう「社内固有のマネジメントスキル」が必要であり、時間を費やすのもマネジメントのひとつだと思います。まぁ私は失って良かったと思っているのですが、そういう仕事?が好きな人、得意な人もいますので人それぞれですね。(ぶっちゃけ「そんなもの高めてどうなるんだ?」と私は思っていますが…)

生まれたもの(変化したもの)は、まずアイデンティティがあげられます。小難しい単語ですみません。以前は、組織に自分の主体を置いていることが多かったのですが、それが自分自身へと変化しました。
例えば、以前はほとんどの仕事の上で(特に外部と接する機会が顕著ですが)常に「当社の考えは・・・」「我が社では・・・」と考え、行動し、発言していたように思います。それが「私の考えは・・・」「自分は・・・」となったということです。
そうなってくると、自然と顧客や社会がぐっと近く感じられるようになってきました。
それを私は社会感度と呼ぶことにしています。それは決して社会感度が鋭敏になったというわけではなく、会社組織を通さずにダイレクトに自分と社会が接しているという感覚を持つことが多くなったという意味です。世の中に起こっている様々なニュースも身近に感じられるようになりました。

もうひとつは変化したのは出没エリアです。都内近郊に在住の方でないと分かりにくいかもしれませんが、これまでは山手線を時計に例えると3時~6時(東京から品川くらい)で仕事をすることが多かったのが、今は6時~9時(品川から新宿くらい)で仕事をすることが増えました。
単にそれは大手企業だけではなく、中小・ベンチャー企業との接点も増えてきたということで、それぞれ密集しているエリアが異なるという話なのですが、これも自分自身としては面白いシフトだなぁと思っています。
そもそも出没エリアなどという感覚を持つようになったのも、「自社」という物理的拠点の感覚が薄くなり、どこでも仕事ができ、身軽に動けるようになったことが影響していると思います。
それを促進しているのは、ドキュメントが紙中心だったものをデータやクラウドへとシフトさせたIT関連技術でしょう。このシフト感覚は組織に属していても同様だと思います。

上記だけではなく、働き方を変えた結果あたりまえになってきたことはいくつもあります。私は働き方をシフトしてはじめて気づいたことが多かったのですが、それは本来であれば、組織に属していても必要な感覚だったのかもしれません。
決して組織のブランドに依存し、組織にぶら下がっていたわけではない…(と自分では思っていましたが)のですが、もしかしたらそれは組織に属する故の、悪い意味での安心感や甘えだったのかもしれないなぁ、などと思ったりしています。

大橋新氏

大学卒業後に金融機関・教育会社、シンクタンクを経てフリーに。
ド文系で特別な技能や専門分野を持たず、かといって特別に優秀でもないアベレージ人材。
そんな大橋新が経験した働き方のシフトについて「働き方改革」をどのように捉え、
どのように実践しているか言い散らかすコラム。

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