リベラル株式会社 事例にみるKAIKA経営の実践

KAIKA Awards 2016ではKAIKA大賞2組織、KAIKA賞4組織、特選紹介事例3組織を選出いたしました。
こちらのコラムでは順次事例をご紹介しています

KAIKA大賞 リベラル株式会社

「【福祉】としてではなく【戦力】としての雇用〜知的障がい者が『職人』になる〜」

【取り組み概要】

リベラルの親会社(ラディックス株式会社)で障がい者雇用を積極的に進めるべく、障がいの種類・特徴、特例子会社などの内容を検討した結果、知的障がい者にしぼった雇用を行い事業展開する特例子会社を設立することが決定された。社名は、障がい者との関わり方の基本原則は、臨機応変(自由)の対応であるということと、健常者・障がい者の区別なく誰でも楽しく働ける自由な環境を持ったラディックスを作り上げるという思いから、RIBERAL(Liberal of RADIX)と決められた。

知的障がい者を雇用した活動をするとは決まったものの、業務内容までは決まってはいなかった。グループ内で仕事の洗い出し・切り出しを行ったが、新会社を維持していくための量にはならなかった。知的障がい者の特徴である単純作業や反復作業が得意なことを活かせる事業はないかと、設立メンバーが新規ビジネスを模索していたある日、会社の汚れたコピー機を見て、綺麗に磨くことが知的障がい者に適しているのではと直感してリベラルの事業の方向性が定まった。知的障がい者雇用の窓口であったハローワークの担当者からは、「障がい者を戦力として雇用してください」と言われ、何らかのプラスを会社にもたらす戦力になってもらおうと深く考えたことも、事業の方向性と領域を明確にするために重要なことであった。

また親会社が新品のOA機器を取り扱っているため、販売先として親会社を頼れなかったことから、違いを打ち出す必要があった。「中古とは思えない綺麗な商品を作ることができたら売れる。売れる商品を創れる社員は自立することができる」という考えから、現在も継続されている会社指針「日本一綺麗な中古OA機器を創ろう!」が生まれている。2008年4月1日に会社設立、 6月より健常者2名、障がい者5名でリベラルはスタートした。前例がない取り組みは順調であるはずもなく、2ヵ月ほどは何をやっても結果がでなかった。障がい者に作業を必死に教えても、「なかなか覚えられない」、「注意してもすぐ忘れる」、「昨日はできたのに今日はできない」、「返事したのにわかっていない」が繰り返された。教育もままならず、販売先の確保もできないという状況となった。会社が潰れたら障がい者は路頭に迷うという危機感から、健常者の業務分担を障がい者の育成担当、営業活動(仕入先確保/販売先開拓)と経理担当とし、リベラルにとってプラスになることだけを考え、前を向いて行動しようと定めた。機器の分解の仕方や清掃方法、清掃道具や洗剤等、健常者・障がい者の区別なく「考え」、「試し」、「方法を確立」していった。

実際の活動の中で、障がい者との関わりで重要なこととして、「正面から向き合う」、「過度な配慮はしない」、「ステップアップ」の3点がある。
正面から向き合うとは、知的障がい者に何か必要なことを教える際、障がい者に合わせるのではなく、どんな場合も正面から向き合い指導することである。そこには設立から 2年で2名の知的障がい者が退職した原因は、障がい者に対する遠慮や障がい者への踏み込みが甘かったことであるという反省がある。問題が起きたときは、障がい者だからで済ますのではなく、その場で本人が理解し納得するまで徹底的に話し合うこととしている。

過度な配慮をしないのは、ある意味守り過ぎることで、障がい者だから仕方ないと決め打ちすることで、能力の開花を妨げてしまうと感じられるからである。障がい者にとって、これは難しいだろう、できないだろうと勝手に考えたり、かわいそうだから注意や叱ることはやめようと判断したり、先回りしてしまうような遠慮がちな対応は、本人のためにならない。今の現場には、できない、わからない、難しいと言っても、甘やかしたりせず、心を鬼にして頑張らせ、簡単には諦めさせない雰囲気がある。努力することを学び、汗をかいて頑張ることが大切だと体で覚え、人として見違えるような変化を遂げる事例が多く生まれている。君と一緒にがんばりたい、君が必要である、しかし今のままではだめだ、と真剣に向き合い話し合うことが、考えや行動を変え、出来なかったことが出来るように、あきらめがちだったけれど頑張るようになっている。

ステップアップとは障がい者が、教えられる立場から教える立場としてリーダーにステップアップしていくことである。そもそも知的障がい者は指示されないと動かないと言われている。多くの特例子会社では指導を行う健常者が常に障がい者の傍らで待機し、指示命令することで作業を進めている。当初、リベラルでも同様の取り組みを行っていたが、自分で考えず言われた事しかできない状態になってしまった。指導する健常者を作業現場から離し、障がい者が自分たちで考える機会を増やした。すると、中心となる障がい者がチームをすこしずつまとめ、結果として自分たちで考え、相談し、助け合い、答えを出せるようにまでなった。障がい者が障がい者を教える風景は、同社を訪れた見学者などから驚きをもって受け止められている。そしてそのフィードバックは障がい者にとって良い刺激となっている。若手社員の育成に悩む企業も多いが、本事例はそういった企業にも参考になる取り組みと考えられる。

KAIKAポイント

障がい者雇用について一般的には、雇用することが目的化する傾向が見られる。親会社から定型反復業務の切り出しを受けて業務委託が売り上げのほとんどというケースも多い。一般的には法定雇用率が確保できて、障がい者雇用への取り組み義務を果たせばよしという考えが透けて見えることも多い。それとは一線を画すリベラルは、障がい者の仕事ぶりを世の中に広めていくことを使命としている。

目指しているのはあくまで「普通の会社」である。創立当初、「障がい者雇用率の達成とリベラル単体での黒字化」、「障がい者を戦力化し社会人としても自立できるようにする」という 2 つの目標を掲げて、そのための事業を検討した結果、中古OA機器を清掃及び販売する事業活動を開始した。現在では、売り上げの75%は親会社以外への販売が占めており、また障がい者の雇用も年々増加している。教えたことだけを黙々と実行するという段階から、自分たちで考え指導する立場に成長する人も育ってきている。【福祉】という考えを排除し、利益を追求できる【戦力】として知的障がい者を育てるために、独自の育成マニュアルを作り上げ、知的障がい者を技術だけではなく人としても成長させ、職人と呼ばれる水準にまで育てている。

審査委員会コメント

現地見学の場面では、作業について指導する社員のもとに報告や質問に来る様子は、時にジョークを交えたりしながら笑顔も見られ、厳しい仕事観の中、暖かい人間関係があることがうかがえた。教育・育成・組織作りをすることに相当な苦労もあったと想像に難くないが、「のんき・根気・元気」をスローガンに明るく前向きに取り組んでいる。

チームのリーダー的な存在の人材が活躍しており、障がいを持っている人にどのように仕事を教えるのかについて日々工夫と改善が行われているなど、組織としての成長も著しい。リファイニングという仕事の概念を超えた仕事を目指し、徹底した仕事を行うことを目標としている。その結果、現在では清掃分野だけではなくコピー機の修理といった技術分野でも知的障がい者が努力を重ね職人として活躍している。また障がい者の成長のためのプログラムに根気と創意工夫があり、実践を通じて経営側の意識や・健常者スタッフにも大きな成長がみられる。

さらに現在、障がい者の働き方を広めるというというミッションで、経営陣を中心に、障がい者雇用が広がっていけば良いと考え、同業や競合に対しても、全てのノウハウを伝授するつもりで、同じような環境下にある企業や活動を支援するセンター的な機能を果たしていきたいということで活動の領域を広げている。こういった点も、雇用の多様化に与える影響が強いと考えられる事例である。

※障がい者についての表記について
昨今、マスコミなどでは障がい者と表記することが多くなっています。官公庁では障害者・障がい者・障碍者などが併用されており、一般的な表記としては定まってはおりません。リベラルでは日常的に障がい者という表記が使用されていることから、今回の事例では、障がい者という表記を使用しております。

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