中日本高速道路株式会社 事例にみるKAIKA経営の実践

KAIKA Awards 2017ではKAIKA大賞2組織、KAIKA賞4組織、特選紹介事例7組織を選出いたしました。
こちらのコラムでは順次事例をご紹介しています。

KAIKA大賞 中日本高速道路株式会社
「コミュニティの創生を目指した 新たな地域連携の仕組みと人財育成」

KAIKAポイント

経営理念ならびに経営方針から落とし込まれた「地域が抱える課題の解決と地域活性化に貢献する」ことをテーマに掲げた事業化プロジェクトである。新規ビジネスへの取り組みを、「研修」と位置づけて取り組んでいる点にも独自性がある。座学の研修ではなかなか会得できないスキル・経験を得られ、人財育成につなげている点は今後他社の参考になり得る。これまでのNEXCO中日本(中日本高速道路)の本業で培ってきた信頼を基礎として、これまでとは違う形で地域との新たな関わり方をうまく構築し、地域創生、地域全体の活性化を目指した事例でもある。

会社の視点 社員の視点
  • 地域創生とNEXCO中日本の持続的な成長、共存共栄が両立されたビジネスモデルを構築する。
  • 新たなビジネスをクラウドファンディングの活用により資金調達する。
  • 次世代につながる新たな価値を創造する。
  • 企画・立案・実行・評価を一貫して実施し、成功・失敗を実際に体験することで、「チャレンジする」 意識・行動へ変革する。
  • ノウハウを吸収することで、実際の業務の中でのビジネスモデル構築やプロジェクト実施にも役立てる。
  • ソーシャルビジネスへの関心や知識を高める。
  • 起業家精神を刺激し意識を高める。
  • SNS等を活用したプロモーションスキルやITリテラシーを向上する。

【取り組み概要】

本プロジェクトは、協働して活動できる地域のパートナー探しに始まり、社内プレゼン(審査)を経て、クラウドファンディングの活用そして商品やサービスを実際に生み出すところまでが一連の活動である。一般的な事業化プランとの相違は、自社組織に拘っていない点にある。自社だけの資源ではなく社外資源を活かそうと試みている。実際に地域やパートナーのニーズを拾い出し、パートナーがその実現に向けて主体的に取り組むよう説得し、人的支援という形で協働していくというものである。自分たちの資源を利用して開発するのではなく、地域の方を巻き込むことで事業化ステップを体験している。また資金面でもクラウドファンディングの利用によって、ビジネスとは直接関係がない支援者の興味や関心を獲得しなければならないという視点を得ている。当初は見えず意識もしていなかった利害関係者を浮かび上がらせるという、研修でありながらビジネスをゼロからの立ち上げる困難さを体感し、個人としての次のキャリアにつながる面もある。

外部の関係者との取り組みのほかにも複数の緊張感を伴った関所がある。一つは事業アイデアの社内プレゼンを通過して実際に取り組むことである。NEXCO中日本では通常業務で役員に対してプレゼンする機会はほんどないため、緊張感が伴うという。もうひとつは、活動資金の獲得についてクラウドファンディングを利用していることである。一般的には新製品開発を目的とした研修では、費用は予算の範疇で処理することが多い。

事例 場所 概要
サイダーの復刻を目指した会社の設立 岐阜県
養老町
昭和初期には、東の三ツ矢、西の養老と呼ばれていた「養老サイダー」は、創業家の当主が亡くなったことを契機に2000年に廃業した。2017年は「養老」の元号改元から1300年にあたることから、養老町、観光協会が「養老サイダー」の復刻を目指したもの。準備として、2017年5月に『養老サイダー復刻合同会社』を設立した。
母親と小さな子供との新たな交流拠点の創造 神奈川県
茅ケ崎市
柳島キャンプ場内
クラウドファンディングの成立によって購入したテント等(グランピングを意識した高級仕様のもの)を使用し、キャンプ場周辺地域の母親と小さな子供との交流場所となっている。子育ての悩みを持った若い母親たちが、気軽に子供を連れて、少しおしゃれな場所で集まることが出来る、大人気の場所となっている。
観光マップの作成による地域活性化支援 神奈川県
茅ケ崎市
柳島キャンプ周辺
クラウドファンディングで協力して下さった名産品の各会社と、柳島キャンプ場を運営するNPO団体との関係構築を行ったことによりキャンプ場を利用するお客さまなどへの観光案内として、互いが協力しあい、観光マップを作成する活動が始まり、新たな地域活性化がなされている。

資金が予算として付与されるというものに比べて自らが獲得していくという点が、本事例は特徴的だと言えよう。クラウドファンディング活用の視点として特筆すべき点は2つある。一つは外部視点からの評価が得られるということであり、もうひとつは資金獲得の困難さを理解することである。クラウドファンディングについては、「Makuake」の購入型・オールオアナッシング方式を選択している。プロジェクトオーナーが自らの思いを伝え、「共感した」「支援したい」「欲しい」などと感じた支援者から支援金を集め、支援金額に応じてリターン(お返し)を支援者に返す方法である。プロジェクト期間中に目標金額を設定し、目標額に1円でも届かなかったときには支援金を全額返金し、手数料も発生しないというオールオアナッシング方式では、社内でどれほど良いものという評価が得られても、社会的に認められないと、活動そのものが実現しない。生半可な取り組みではないという緊張感がある。

そして実際の活動の中で、パートナーのニーズと提供可能な資源を結びつけて、活動を成功裏に導くという緊張感である。どの分野も少しでも手を抜くとプロジェクトが予定通り遂行しないという緊張感に溢れている。また予定通りにいかなくても、結果を出すために責任者としての対応が常に求められている。活動を通じてプロジェクトの達成に必要なカネ・ヒト・モノを調達し、適切に組み合わせ、有効な活動を実現するという、知識としての理解ではなく、日々の活動の中で悩みや壁を乗り越えながら、ビジネスに必要なスキルを体得していく。

関係者から「NEXCO中日本はこんなこともやるのですね」というポジティブな意見があったという。

NEXCO中日本の新たな存在価値を構築しつつあり、地域を高速道路で物理的につなぐのみの関係ではない、新たな地域創生のパートナーとして認識されはじめている。社員がNEXCO中日本の存在意義とはなにか、NEXCO中日本の資源・価値とは何なのか、どのように地域に貢献することができるのかについて真剣に考え直す絶好の機会ともなっている。

審査委員会コメント

NEXCO中日本は、クラウドファンディングというツールを使って、地域活性化に貢献している。それを通じて個人がビジネスを生み出す経験を経て、個人のダイナミズムが育てられ、組織に波及しつつある。組織が変化し、新規ビジネスが実践できる会社に変わってきている、という連鎖が感じられる。活動自体の広報を社内外に広げることが出来れば、会社のイメージ自体の変化にもつながることが期待される。

公共性が極めて高いという事業特性(営利性の低く設定せざるを得ない組織)に起因する新しいことをする上での「原資の少なさ」をクラウドファンディングという新たな手法を活用することで乗り越えている点がユニークである。

今後この研修を受けた社員が自分の職場で自身の経験をどのように共有していくか、本業あるいは新規ビジネスで能力発揮させていくかは今後の課題の一つになるであろう。ただ事務局を含めたプロジェクトメンバーの能動的な意識・志向が組織全体に波及しつつある息吹を強く感じられる。

注)NEXCO中日本では、社員は会社にとって最大の財(たから)であると位置づけているため、「材」を「財」に改めて表記している。

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