株式会社エーピーコミュニケーションズ 事例にみるKAIKA経営の実践

KAIKA Awards 2017ではKAIKA大賞2組織、KAIKA賞4組織、特選紹介事例7組織を選出いたしました。
こちらのコラムでは順次事例をご紹介しています。

KAIKA賞 株式会社エーピーコミュニケーションズ
「常駐型ITエンジニアの働き方&キャリア改革」

KAIKAポイント

エーピーコミュニケーションズ(以下APC)は、顧客要求仕様に基づくITインフラ設計開発・支援・構築・運用・保守とその人材供給サービスの企画・管理が主要業務である。APCでは雇用しているITエンジニアが顧客先に常駐しながらも、長期視点で継続的にキャリア形成していくための仕組みづくりに10年あまり取り組んできた。エンジニアの継続的な成長により、日々加速する多様なニーズ、技術的な課題や新しい技術導入に貢献することを目指している。人材の質の転換と共に、会社の目指す方向が明確化することで、組織としての力が高まっていて、対応案件の質もより上流工程へと変化している。顧客の認識も労働力提供期待から技術パートナー としての期待へ変わってきている。一般的なITエンジニアは、顧客の情報システム部門などに所属し、常駐形態で派遣契約もしくは業務委託契約で就業する割合が多く、プロエンジニアとして技術の核の部分を担う存在として重要な位置付けを占めている。ただ多くの会社が案件獲得と効率性の側面を優先することで、個人の要求を無視した異動を行うなど、プロエンジニアとしての主体的キャリアの構築に取り組めていない状況がある。APCは社員が自ら能動的にキャリアを考え計画し、事業戦略や営業戦略を同期し、ITエンジニアの成長支援を行っている。その結果、年間の人事異動割合25%以上にものぼる全社的なジョブローテーションが活性化しており、離職率の低下、キャリアアップの加速化が進み、全社の技術力が底上げされている。また、新しい技術分野、新しいニーズに適合した技術力研修機会を提供している。顧客への組織としての技術力提案により、魅力ある案件が増えることでさらにジョブローテーションが加速している。

取り組み概要

社外で就業する常駐型の働き方においては、我が社という意識がなく、人間関係が希薄となり、社内でのキャリアアップを諦めてしまうケースが多いといわれる。そこでAPCは社員がキャリアについて自律的に考え取り組めるよう、「社内情報収集の場を提供」、「社内の人間関係構築を強化」という2点の強化策を打ち出している。

①「社内情報収集の場を提供」とは、全社方針、全事業部(所属している事業部だけでなく他の全部署)の方針や状況、そして社内全案件状況の確認、エンジニアに必要とされるレベルと技術力を習得することができる場の提供である。社員が自社の中で進んでいく道筋(案件、部署、技術領域)についての選択肢を提示することで、自律的キャリア形成支援が行われている。代表的な取り組みとしては、社員総会・現場報告会そして社外/社内勉強会が挙げられる。
APカンファレンス社員総会は、年2回上期と下期の期初に全社員が集まって行われる。代表取締役から経営状況、今後の会社の方向性、方針等の説明があり、各事業責任者から事業の動向や方向性、所属の社員に求めていることなどを説明する機会となっている。欠席者にはビデオ配信している。社長賞はじめいろいろなアワード(表彰)を行い、活躍している社員の事例共有も行われる。会社の方向性、事業部の方向性を知ることが、キャリア検討のベースになっている。
APカンファレンス現場報告会は、年2回4月と11月、案件に携わっているエンジニア同士の案件概要(業務内容、必要とされるスキル、身につくスキル)共有のために実施されている。イベント会場を貸し切り、合同会社説明会のような形態で、各案件やプロジェクトがブースを構えて、社員は自分の興味のある分野、目指すべきキャリアに近い案件のブースを回り説明を聞く。生の状況が把握できることで、目指すべき具体的なキャリアイメージをつかむことが出来ている。
出展する案件やプロジェクトは、全社の案件のなかでも技術的に注目すべき案件、会社として重視している案件が選ばれている。発表者にとっても案件の価値や目的の再確認機会となり、プレゼンテーションのスキルアップにもつながる。
社外/社内勉強会は、社外向けの他、社内向けの勉強会を複数開催している。技術の最新トレンド、技術の詳細を知るとともに、他の常駐先の優秀な社員を発見して目指すべきキャリアイメージを見つけるとともに、自ら勉強会に登壇しアウトプットすることで自己成長の機会となっている。

②「社内の人間関係構築を強化」とは、社内でキャリアアップするため、自身で進みたいと考えている分野の上級エンジニア、社長をはじめとする幹部社員、営業的な機能を担う上級管理職など、いろいろな方向での人間関係を構築できる機会のことである。
自らコミュニケーションを取ることで情報を得て、考え方を学ぶことができるが、懇親の場を含めていくつかの策を提供している。
2ヵ月に一度本社で開催する全社レベルの「ふれあうSAKABA」は、関係性の希薄化を解消するための全社員間懇親会である。強制的な出席は勘弁して欲しいという抵抗感を和らげるため、業務終了後に各自のペースで参加できるよう時間制限をつけず、自由な雰囲気で気軽な空間をつくっている。役員から事業責任者が勢揃いし、時には役職や所属などを飛び越える縦横無尽のコミュニケーション機会としている。キャリアの停滞感や直属上長のフォロー不足を補う機会である。
同様にコミュニケーションを取る機会として、顧客先に常駐している社員のもとに出向いて20名程度と懇談する機会を「カタルバ」と読んでいる。こちらも2ヵ月に一度程度、本部長含めた幹部社員が参加し、顧客に対する情報共有や問題解決の場となっている。このように職場でのコミュニケーション不足を補う機会として、同期や世代そして沿線などの会などでの懇親会も検討している。

審査委員会コメント

IT業界では、非正規雇用の多さや離職率の高さが指摘されているが、その構造に正面から立ち向かっている。 社内における継続的な成長を目指せるように専門職だけではなく、管理職向けの研修やジョブローテーションを通じて、社員が各々の強みを発揮できるステージを設計している、結果的に組織としての成長へと繋げ、顧客価値を生み出している活動といえる。顧客先に常駐するエンジニアのキャリア形成を改革することで、業界構造を変え、個人や社会に価値を高めていこうという取り組みである。プロジェクトとして取り組みを始めたのではなく、経営哲学に基づいた共有価値観から個々の問題意識を生み、個々の問題意識から様々な施策が生まれた。そして、その集合体として現在の形に至っているのである。

常駐型エンジニアのために懇親の場を開催し、社長や役員がシェフに扮して、社員に料理を振舞うなどの取り組みは興味深い。情報関連の会社だけではなくテレワークが普及する中で、一つの解決モデルとなろう。ともすると思いつきで実施されているかに見える施策や懇親会も、個人と組織の氷山モデルを有機的に統合させている点がユニークで、自律的に進化し続ける組織を意図的に創り出していることが注目される。

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