全日本空輸株式会社 事例にみるKAIKA経営の実践

KAIKA Awards 2017ではKAIKA大賞2組織、KAIKA賞4組織、特選紹介事例7組織を選出いたしました。
こちらのコラムでは順次事例をご紹介しています。

特選紹介事例 全日本空輸株式会社
「ANA BLUE WING プログラム」

KAIKAポイント

このプログラムは自らが社会起業家でなくても、間接的にではあるが社会貢献することのできる仕組みを生み出したものだ。全日本空輸株式会社(以下ANA)が用意した社会課題解決に影響力のあるチェンジメーカーの活動記事を個人SNSでシェア、特設サイトで航空券購入、そしてチェンジメーカーの活動に対して共感して保有マイルを提供、という複数の方法から得られるWINGと呼ぶポイントをチェンジメーカーのフライト代として提供する。活動への支援表明とポイント提供が支援活動につながる。単純な募金活動ではなく、ANAとしてはマーケティング活動として、主に海外での飛行機会社としての認知度向上や顧客獲得につながる。またチェンジメーカーも一方的に支援の施しを受けるだけではなく、活動ストーリーを提供することでその輪の中に入る。社会的な視点としての個人は、チェンジメーカーに対してWINGポイントを提供することで活動に支援することが可能となる。社会・チェンジメーカー・ANAの三者を結びつける働きである。個人と組織の活性を狙ったANAの活動で12年続くバーチャルハリウッドという創造支援プログラムの中から生まれている。社会貢献意欲が高い人を巻き込み、影響ある人や団体と結びつけるともに、社会課題解決への関心を広げるという面があり、さらに社内においても影響力のある人を結びつけ、横断的な新しい取り組みを生み出す土壌と体験を創出している。

取り組み概要

世界の様々な課題に立ち向かうチェンジメーカーが、世界を飛び回る費用のなかでフライト代は膨大なものとなる。その一部をANAとお客様(個人)が一緒になって支援し、チェンジメーカーが本来の活動に活かす資金を最大化しようという試みである。

awards2017_case9_01社外の部分での大きな要素として、社会起業家ネットワーク「アショカ」や「Endeavor」と協力関係を取り付けている。アショカは1980年に「ソーシャル・アントレプレナーシップ(社会起業)」という概念を生んだビル・ドレイトン氏が創設した社会起業家を支援するネットワーク組織で、世界80カ国以上で社会問題解決に向けて活動している。マイクロクレジットを生み出し2006年にノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス氏もアショカの教育系プログラム創設者の一人。社会起業家はアイデアと強い意思によって国家レベルでの変革を促す存在である。どこかに所属するのではなく独立した存在で、問題の解決についてアイデアを表明するだけではなく、具体的にビジネスと社会的事業領域をつなげる存在である。途上国にトイレを普及させる活動、発展途上国の医療難民をモバイルの力で救う活動、クレジットカードを持てない人に携帯電話を使った少額融資を可能にする活動などに取り組んでいる。

ANAは社会起業家であるチェンジメーカーのフライト代を寄付するだけではなく、一般の方に活動を知らしめ社会活動への参画を促す枠組みを提供する。飛行機で移動したり、マイルを寄付したり、SNSでシェアすることで、ANAが社会の課題解決のために活動しているチェンジメーカーのフライト代を支援する。

awards2017_case9_02飛行機を利用する方が、航空機を利用する際に専用サイト(https://www.ana-BLUEWING.com/)を経由してANAの航空券を購入すると、航空運賃の1%がチェンジメーカーのフライト代として還元される。活動によるWING総額は206,378WING(1WING=1円)である(2017年12月31日現在)。専用サイトを利用した航空券購入額は、2015年と2017年を比較すると約7.7倍に増加している。

その他、チェンジメーカーの活動を選択して、保有している3000マイル単位で寄付するということと、SNSを通じた支援がある。SNSとしてはBLUEWINGのFacebookページとTwitterアカウントにアクセスしてサイト内の記事をSNSでシェアすると、1回につき15WINGS相当がANAからチェンジメーカーに還元される。また、BLUEWINGのWebサイトをFacebook、Twitter 、LinkedInでシェアしても、1回につき15WINGS相当の支援が可能である。活動をシェアするだけで、社会起業家やスタートアップのフライトをサポート可能である。

審査委員会コメント

入社2年目の社員の業務時間外活動から始まっている。外部内部の人々のサポートを得ながら、多種多様な職種の有志の支援を引き出し、協力を得ながら活動の推進力を高めてきたことも新しい時代の変革リーダーシップとして高く評価できる。一人の熱い想いが牽引し、共感した人が次々に増え、実績を残したことにより、組織側が取り組みにスポットライトを当て推し進めようと変わってきている点が重要である。

大組織に風穴を開けようという点が、個人のダイナミズムから組織のダイナミズムに移っていく部分として素晴らしい活動である。組織として推し進めており、広がる土壌がある。社会的影響もすでに出ている。

個人が社会への感度を高く持っていたからこそできたことで、その感度が共感を広げ、他のメンバーも巻き込み、ある程度組織内でも了承を得られ活動が進められている。個人・組織・社会という観点からひとつのストーリーとして、大企業ではなかなかイノベーションを起こせない、風穴を開けられない、といわれる中で大いに参考になる。

狭義のCSR的取り組みとしてではなく、持続的な社会問題解決を実践し、既存のエアラインユーザー以外の世界中の人々のための取り組みとして位置づけている点に、スケール、独自性を見いだすことができる。また、単なる社会貢献としての位置づけではなく、ロングタームでの需要喚起を視野に入れた活動である点にこの取り組みの裾野の広さを見いだすことができる。既存のエアラインユーザーだけでない人々を巻き込む活動で、かつそれを長期的なビジネスに連動させている点が非常にユニークかつ力強い。

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