KAIKA Awards 2018受賞・特選事例に学ぶ花開く組織づくり 
第1回 組織の成長の幹となる目的軸=経営理念

【会報誌「JMA Management」(2019年6月号)掲載】

企業がもつ共通の目的とは、組織をいかに持続的に成長させるか。とりわけ、先が見通しにくく、従来の考え方や方法が通用しなくなってきた今日のような時代だからこそ、より重要な問題となっています。
そもそも企業とは、社会にとっての価値を生み出すからこそ、その対価として利益を獲得し、存立できるものです。この価値を生み出すために、組織を構成し、社内外の分業体制をつくり、活動しています。
このとき、組織には共通の「目的」が必要になります。何のために存在し、どういう組織でありたいのか。共通の目的があるからこそ、一人ひとりが自律的・主体的に行動し、内外で連携・協働を深めることができるのです。
企業における共通の目的とは、経営理念にほかなりません。2018年度のKAIKA Awards受賞企業にも、経営理念を軸に、持続的成長を実現している取り組みが見られました。

事例① 株式会社垣内
創業者のDNAを活かした会社づくり

株式会社垣内(南国市)は、「高知のエジソン」と地元で語り継がれている創業者のものづくりのDNAを活かした会社づくりで、地域の基幹産業である農林水産業や建設業界向けの産業用機械の製造・販売を行っています。
「独自性のある企業としての発展」をめざし、顧客の要望には何としても応えるという姿勢で、顧客のニーズをよく尋ねるほか、用途や場所などに応じて、機器の設計から生産、取り付けまでを一貫して行います。
こうした姿勢(DNA)は、日常的な業務活動を通じて共有されています。月初の社員全体会や、各持ち場で毎朝行う朝礼ミーティングなどにより、全員で確認し合っています。こうして先輩から後輩へとDNAを伝えているのです。
このものづくりのDNAは、地域社会にも良い影響をもたらしています。県やJA、商工団体との農商工連携による製品開発や、県内の中小企業41社が加盟する「KKネット」を主宰、技術研修や品質勉強会を開催するなどして、共同受注に結びつけています。
さらに、次世代のものづくり人財の育成に向けて、「高知のエジソン賞基金」を県内主要製造業と共に創設し、小中高校生を対象に、ものづくりに関する作文や絵画を募集・顕彰しています。創業者のものづくりのDNAを軸に、社員や組織の成長のみならず地域社会の持続的発展に結びつけている経営といえます。

事例② 千葉オイレッシュ株式会社
「働いていて良かった」と思われる会社

千葉オイレッシュ株式会社(君津市)は、「環境事業を通じて地域社会から必要とされる」会社をめざし、環境にかかわるリサイクル技術と、人を大切にする経営を両輪に事業を行っています。
京葉工業地帯の工場から発生する廃油などを回収し、房総半島の中山間部に位置する工場で再生燃料化し、東京湾周辺の工場へ代替燃料として販売するというリサイクルシステムを構築。地域の環境負荷低減に貢献しています。
一緒に働く社員のため、企業規模は大きくなくとも大企業や都会で働く人々に負けない待遇や環境をつくりたいとの思いから、人を大切にする経営を実践。賃金や有休、育児休暇などを充実させると共に、社員に経営内容を公表しています。さらに、社員からの業務
改善提案制度を設け、提案に対する対応状況などを、毎月、開示することで、社員の責任感と達成感を醸成しています。
近隣の高専生のインターンシップ受け入れや、地元消防団の活動への協力なども行っています。これらにより社員の主体性を育むと共に、地域社会の役に立つという経営理念を実感する機会をつくっています。
こうした活動を通じ、地域社会から必要とされると同時に、社員からも「この会社で働いて良かった」と思ってもらえるのです。創業以来の黒字・無事故がそれを示しています。

事例③ 松川電氣株式会社
創業の原点、「知恩報恩」をめざして

電気や通信の設備工事業を営む松川電氣株式会社(浜松市)。2017年の創業50周年を機に、自社や事業の原点を見つめ直しました。何を重視し、何をすべきか問い直したのです。
その結果、自社のすべての活動が「社員の幸福と地域社会への恩返し」であると再認識。これは創業者である松川家の「家訓」につながっています。「知恩報恩(恩を知り、恩に報いる)」をめざし、「自らの人間力をつけ、真の幸福と楽しさを追求し、夢・希望を後世に伝えること」を経営理念に掲げました。
その実現に向け、経営理念の実行者である社員一人ひとりが人間力をつけるために、「想いの共有」「読書会」「技術スキル」「品質管理」などの社内研修を行っています。さらに月次の「目標達成状況シート」によって、成長目標に対する進捗状況を上司と共有する仕組みをつくっています。「社会貢献活動部」も、社員自らの成長を支援するユニークな仕掛けです。街頭募金や清掃活動、ボランティア休暇取得に、年間計画を立てて取り組んでいます。
同社には営業などのノルマはありません。その代わり、人間力成長のノルマがあるそうです。社員一人ひとりが成長し、幸福になりながら、地域に恩返しする。自らの原点を大切にした経営といえるでしょう。


以上、自社の目的、経営理念を軸として組織がKAIKAしている事例を紹介しました。
今回の事例は中小企業のものですが、大企業であれば業務が分業化され、個々の仕事と社会のかかわりが意識しにくくなるでしょう。
自社の目的を問い直し、それが社員一人ひとりの日々の行動とどう関わっているのかを再確認することが、より重要となるのではないでしょうか。

日本能率協会 KAIKA研究所 所長 近田高志

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