KAIKA Awards 2018受賞・特選事例に学ぶ花開く組織づくり
第2回 社員の主体性を活かし、成長する組織

【会報誌「JMA Management」(2019年8月号)掲載】

VUCA(※)ともいわれる、変化が激しく、先行きが見えない時代を、いかに乗り越えていくか。
そのカギとなるのは、社員の自律的、主体的な行動ではないでしょうか。
世の中の変化をいち早く察知して、それに応える商品やサービスを生み出す。あるいは、多様化する顧客の期待に臨機応変に対応し、期待を上回る経験価値を提供する。
そのためにも、社員一人ひとりが主体的に考え、自律的に行動することが不可欠です。いちいち上司の指示を仰いでいては、世の中の変化に対応することはできません。
今回は、2018年度のKAIKA Awardsの事例から、社員の主体性を活かすことで、組織としての成長を実現している取り組みをご紹介します。

※Volatility(流動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の略。将来を見通しにくくする要因。

事例① たこ梅 https://takoume.jp/
社員が自律的に行動できる安全・安心な場づくり


たこ梅での行動探究の入門セミナー時の様子
(提供:たこ梅)

有限会社たこ梅は大阪に4店舗を構え、「日本最古」といわれるおでん屋さんです(1844年創業)。2001年、サラリーマンだった現店主が5代目として家業を継いだときは赤字体質でしたが、マーケティング理論などを活用し、2年で黒字化を達成、その後も売上と利益を順調に伸ばしました。
ところが、08年のリーマンショックを機に売上が激減。途方に暮れた店主が道頓堀の本店を訪れると、カウンターに祖父・父・お子さんの3世代のお客さまの姿が。それを見た瞬間、自分のするべきことは売上や利益の最大化ではなく、「お店を代々100年存続させること」であると気づいたそうです。その実現に向け、「学習する組織」をめざした取り組みをスタートしました。
お店が永続するためには、お店のスタッフが、指示命令によるのではなく自発的に行動することが必要と考え、その土台として「NVC(非暴力コミュニケーション)トレーニング」を受講、月1回の「行動探求セッション」を実施。各自が「自分はいまどんな状態か、何を大切にしたいのか」を理解すると共に、何でも言い合える、自分が自分でいられる安全・安心な場づくりを進めました。加えて会議ファシリテーションやマーケティング、会計などの研修を実施し、学びを日々の業務の中で実践しつづけました。5年ほどで、お店ごとにお客さま向けの企画やイベントを自主的に開催するまでになったそうです。

事例② 西尾硝子鏡工業所 http://www.nishio-m.co.jp/
社員との対話を通じた組織の活性化


西尾硝子鏡工業所の対話集会
(提供:西尾硝子鏡工業所)

板ガラス鏡の加工卸、内装工事を手掛ける株式会社西尾硝子鏡工業所(東京都大田区)。同社も経営危機を機に組織改革に取り組み、復活を果たしました。
現社長はもともと商社に勤めていましたが、1992年に父の急逝をうけて入社。2000年に社長に就任すると、自分より年上の社員ばかりのなか、後継者として自分が会社を引っ張らねばと意気込みます。結果、売上も一気に拡大したそうです。
しかし、ここでもリーマンショックが直撃。リストラにかかわらず3期連続の赤字が続き、行き詰まりかけたときのこと。必死に勉強するために集めた資料のダンボールを、頭に血が上って投げ捨てたとき、1冊の本が出てきました。開いたページには、「会社にとって一番大事なことは、長く続けることだ」とピンクでマーカーがしてありました。そこで、自分の間違いに気づきました。
そこから、同社は改革を始めます。組織開発の専門家の支援を受けながら、まずは幹部社員との対話の場を設定。ときには感情をぶつけ合いながら、互いに向き合うことで価値観を共有し、信頼関係をつくりました。2年目からは全社員を巻き込んだ取り組みへと広げ、活動を継続。社員が自ら考える習慣が定着し、目標面談の際には、目標や課題、進捗状況を社員自ら発信する時間が増え、上司が話す時間はわずかとなっています。
組織開発によって社員のベクトルを合わせ、戦略をやりきる組織へと成長している事例といえます。

事例③ 障がい者つくし更生会 http://www.csf.ne.jp/~tukusi-2/
社員の能力に応じて、会社の枠を変える


(提供:つくし更生会)

株式会社障がい者つくし更生会(福岡県大野城市)は、不燃性一般廃棄物中間処理施設の運転管理を行う会社。「障がいがあっても、物心両面の環境が整えば、一人前の仕事ができる。障がい者と健常者は一緒になれる。それを証明し伝えること」を会社の使命としています。社員39人のうち34人が障がい者ですが、1983年の設立以来、自立的に事業を継続しています。
同社では、毎月、勉強会を実施し、各自がテーマを決めて、その解決に取り組んでいます。また、ISO14001を取得。社員と何回も話し合い、自分たちで課題やリスク、対策を洗い出したそうです。
社員の主体性を養うことを第一にし、社員を会社の枠にはめ込むのではなく、社員の能力に応じて、会社の枠をつくり、変えていく。障がいの有無に関係なく、仕事を通して人が成長し、喜びを実感できることを証明しています。


以上、今回は社員の主体性を活かし、成長を支援することによって、組織としての成長を実現しているKAIKA事例をご紹介しました。

3社に共通すること。
それは、社員一人ひとりと向き合い、対話を重ね、信頼関係を築きあげていることなのではないでしょうか。

日本能率協会 KAIKA研究所 所長 近田高志

★各社の事例は以下からもご覧いただけます。
https://kaikaproject.net/awards/awards/2018award

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